artscapeレビュー
箔画+ 野口琢郎
2010年10月15日号
会期:2010/09/28~2010/10/03
ギャラリーヒルゲート2F[京都府]
京都には、いろんな作家がいる。野口は明治から続く西陣の箔屋に生まれ、漆地に金、銀、プラチナ箔を押すという伝統的な技法を学びながら独自の絵画表現を模索してきた。ともすればマチエールそのものの貫禄や、そのテクスチュアがかえって邪魔をする難しい手法だと思うのだが、野口のこれまでのさまざまな表現の試みと探究心が詩的な世界観となって今展で昇華した印象。水面に輝く陽光を描いた作品や、抽象画の輝きは、見る角度によって表情が異なり幻想的な趣で、箔の味わい深い魅力を伝えるものであった。きっと照明や外光の具合によっても印象が変化して豊かな表情を見ることができただろう。もう一度違う時間帯に見に行けばよかった。
2010/09/28(火)(酒井千穂)