artscapeレビュー

フィギュアの系譜──土偶から海洋堂まで

2010年10月15日号

会期:2010/07/10~2010/09/26

京都国際マンガミュージアム[京都府]

夏の間ずっと気になっていたのだが、終了間際に見ることができた。展示の半分は、現代の「フィギュア」カルチャーの代名詞とも言える"海洋堂”のフィギュア作品や、この会社の歴史や制作にまつわるものの紹介なのだが、前半は近年のフィギュアブームに至るまでの歴史を「人形文化」という切り口から系譜として展示。サブタイトルのとおり、展示が土偶や埴輪から始まるのはやや強引だが、古代から現代まで、時代ごとに分類された人形類の展示資料、日本の人形文化にまつわる文献資料、それらに関する解説も興味深く見やすい。「こけし」や「ポーズ人形」「超合金」「りかちゃん」など、ここでの主な資料となったのは兵庫県立歴史博物館が所蔵する「入江コレクション」の125点。それぞれは数点ずつなので量としてはけっして多くはないし、分類にも偏りがあり、テーマを丁寧に考察しているとは言いがたいのだが、それだけに、担当者の趣向(?)が垣間見える内容でもあり個人的には楽しめた。「こけし」のおみやげを買うブームから派生して「カッパこけし」のブームがあったことを示す資料が展示された「こけし」コーナーが特に良い。後半は“海洋堂”の社史やその商品開発の歴史、フィギュア制作の行程などの詳細とともに、ウルトラマンから「食玩」、等身大の「綾波レイ」まで膨大な数の資料展示。こちらは質量ともに見応えがあり、これまで関心がなかった私にも興味をそそられる新鮮な内容でもあったのだが、それにしても前半と後半の展示には、内容、ボリュームともに差が目立つ。タイトルやテーマ自体は興味深いだけに残念。第二回以降の開催を望みたい。

2010/09/25(土)(酒井千穂)

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