2020年11月15日号
次回12月1日更新予定

artscapeレビュー

2011年06月15日号のレビュー/プレビュー

高井史子「the water」

会期:2011/05/21~2011/06/12

Bambinart Gallery[東京都]

モノクロームに近い青灰色で人気のない風景を描いている。なかには左右対称の風景もあり、必ずしも実在する場所を描いたものでないことがわかる。作者はドイツに留学していた経験があるというが、そういえばこのどんよりとした風景はドイツっぽい。こういう陰鬱なロマン主義絵画ってけっこう好きだけどなあ。

2011/05/27(金)(村田真)

松下徹「KELEN」

会期:2011/05/21~2011/06/19

island MEDIUM[東京都]

頭蓋骨やスニーカーをモチーフに表面を削ったりひびを入れたりしている。最初は写真(印画紙)の上に細工しているのかと思ったら手描きだそうで、じつに複雑な技法と工程を駆使して画面を処理しているらしい。作者はアメリカで思春期をすごし、グラフィティやストリートアートに触発されたという。たしかにモチーフはストリート系だけど、完璧な仕上がりはむしろ工芸に近い。

2011/05/27(金)(村田真)

山内宏泰『写真のプロフェッショナル』

発行所:パイ インターナショナル

発行日:2011年4月5日

これは大変な労作である。著者の山内宏泰は『彼女たち Female Photographers Now』(ぺりかん社、2008)など、インタビューの構成には定評のある書き手だが、日本の写真関係者70人にインタビューしてまとめた本書は、まさに力業としかいいようがない。その顔ぶれがすごい。東松照明、篠山紀信、森山大道、蜷川実花といった大物から、よくこんな写真家までフォローしているなと思うような若手まで、しっかり目配りされている。今年の木村伊兵衛写真賞受賞作家の下薗詠子と土門拳賞受賞作家の石川直樹がちゃんと入っているあたりも、さすがとしかいいようがない。それに加えて、ツァイト・フォト・サロンのオーナーの石原悦郎や東京都写真美術館館長の福原義春など、「写真に携わる人々」にも話を聞いている。2011年現在における日本の写真界の見取り図を知るために、必携のガイドマップになるのではないだろうか。
帯に大書されているように、たしかに日本は「写真大国」である。では、なぜ日本人が写真好きなのかということについて、山内が後書きで興味深い意見を述べている。彼によれば「日本文化を読み解くうえでよく持ち出される『はかなさ』や『もののあわれ』が、写真にはもともと含まれている」こと「俳句や短歌、茶事に生け花と、日本人の心をとらえてきた慣習と相通ずる」のではないかというのだ。これはまったく同感。日本人の文化や心性をあらためて写真家の仕事を通じてとらえ直していく視点が、これから先にはとても重要になっていくのではないかと思う。

2011/05/28(土)(飯沢耕太郎)

東日本大震災:岩手

会期:2011/05/28~2011/05/29

釜石、大槌町、宮古市、田老町、津軽石、山田町[岩手県]

岩手県の被災地をまわる。釜石は、気仙沼の風景と似ている。驚かされたのは、400m以上の長さがあるエヌエスオカムラ工場が、途中でばっさりともぎとられていたこと。そして魚市場横に乗り上げた巨大なアジア・シンフォニー号である。北上すると、鵜住居あたりは、津波が川を逆流し、直接海が見えないエリアに甚大な被害をもたらし、一部のRC造以外はことごとく消えていた。大槌町は、自衛隊が多かったこともあるが、焼け跡の廃墟になっており、戦場のような風景だった。大槌川を渡る山田線の橋梁と橋脚が、街のあちこちに転がる。要塞に守られたはずの赤浜も浸水し、モニュメントとして残すことも検討されていた民宿の屋根に乗っていた船、はまゆりはちょうど解体中だった。大槌町は、女川、陸前高田に匹敵するひどい建物破壊である。宮古や山田町も防潮堤に守られ、海があまり見えない街だったが、街が激しくやられていた。そして田老町でも、津波が有名なスーパー堤防を突破している。海辺では堤防が崩れ、散乱した巨大なコンクリートの塊に海鳥が集う風景は、終末を描くSFのシーンのようだ。いずれの町も堤防やサインなどによって、宮城県や福島県以上に津波の対策を行なっていたが、防御できなかったことを知る。

2011/05/28(土)~29(日)(五十嵐太郎)

賢治の童話の間取りと建築模型展

会期:2011/05/02~2011/05/29

もりおか啄木・賢治青春館[岩手県]

有名な漫画やアニメに登場する住宅や建築の間取りを本にまとめた影山明仁が、宮沢賢治の作品に挑戦した展覧会。『注文の多い料理店』や『銀河鉄道の夜』など、有名な文学が建築の図面によって再現され、さらに模型も制作されている。空間の形式だけを具象化すると文学的な香りが蒸発し、味気ないのだが、文学と建築の違いを考えるきっかけにもなり、興味深い。

2011/05/29(日)(五十嵐太郎)

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