2019年07月15日号
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artscapeレビュー

2011年06月15日号のレビュー/プレビュー

森本紀久子 展

会期:2011/05/17~2011/05/29

アートスペース虹[京都府]

ピンクの渦巻きと、古代中国の遺跡から見つかった神像のモチーフが散りばめられた画面が強烈なインパクトで、目と記憶に焼き付くよう。ユーモラスで若干不気味なイメージの神像はよく見るとひとつずつに番号がついている。1,000個描くまでこのシリーズを続けるのだそうで、今展では600に近い数字を確認した。めくるめくような作品の魅力は森本さん自身のイメージと重なってしまうのだが、それもまた愉快で次回が楽しみになる。

2011/05/22(日)(酒井千穂)

Chim↑Pom展「REAL TIMES」

会期:2011/05/20~2011/05/25

無人島プロダクション[東京都]

渋谷駅にある岡本太郎の巨大壁画《明日の神話》に絵が追加されたというニュースを見たとき、犯人はなんて礼儀正しい人(たち)だろうと思った。壁画本体を傷つけず空白部分にハメ込んだ手口といい、福島原発事故をテーマにしたタイムリーかつ社会批評的な画題といい、色彩や形態を壁画に同調させたそれなりの技術といい、きわめて計画的でしかも現代アートの作法にのっとったインターヴェンションだなあと感心したものだ。だから犯人がChim↑Pomだと聞いたとき、少し意外だったが、それ以上に納得がいった。今回はそのビデオ映像をはじめ、被災地で起こしたアクションを紹介。陸に打ち上げられた船やガレキの山を背景に、メンバーと地元の青年10人くらいがスクラムを組んで、「がんばろー!」「おー!」「まけないぞ!」「おー!」と気合いを100連発入れたり、白い防護服を着た男が白い旗にスプレーで円を描いて、日の丸のわりに円が小さいなと思ったらそのまわりに3個の扇型を描いて核のマークになり、その旗を立ててカメラが退くと背景に建屋の吹き飛ばされた福島原発が見えたり……。とまあ社会活動とアートと悪ふざけの境界線上を全力で突っ走る、そのバランス感覚とスピード感は見事というほかない。展示も「リアルタイム」でやりたかったのだろう、会期は6日間のみ、しかも入場料500円を徴収し、その一部を義援金として寄付するという。

2011/05/23(月)(村田真)

直江沙季「どんづまる」

会期:2011/05/17~2011/05/29

GALLERY SHUHARI[東京都]

DMの写真と「どんづまる」というタイトルを見て、これは面白そうだと思って出かけてきた。インフォメーションにどの写真を使うのか、展覧会のタイトルをどうするのかというのはけっこう重要な問題なのだが、割にいいかげんに決めてしまうことが多い。大事なことなので、充分に留意すべきではないかと思う。
展示の内容はほぼ予想通り。まさに道が行き止まりになって「どんづまる」状況を丹念に採集した写真が30枚ほど並んでいた。このようなコンセプト先行の作品の場合、まずはそのコンセプトをどれだけきちんと成立させているかが問われてくる。直江のこの作品についていえば、カメラの位置、アングル、道とその行き止まりのスペースとの関係、薄曇りの光の条件などがしっかりとそろっていて、ほとんどブレがない。そのことによって、シリーズとしての完成度はかなり高いものになっていた。
ただある程度枚数がそろってくると、それから先が問題になる。次はちまちまとしたアパートが建ち並んでいるような、路地裏の行き止まりの場所を見つけては撮影していく行為が、さらに何かを生み出していく契機になっていくのかどうかが問われてくるだろう。現在の日本の都市の住環境について何かが見えてくるのか、それとももっと個人的な美学に収束していくのか。まだ先は長そうだが、この試みを続けていくことで、新たな発見や認識に結びついていくことを期待したい。

2011/05/24(火)(飯沢耕太郎)

飯田鉄「二つに分かれる小道のある庭」

会期:2011/05/24~2011/05/29

トーテムポールフォトギャラリー[東京都]

飯田鉄のようなベテランの写真家の展示を見る場合、あらかじめ立てていた予想を裏切られることはあまりない。逆に今回のトーテムポールギャラリーでの個展のように、やや意表をつかれるような作品が並んでいると、とても得をした気分になる。長いキャリアを持つ写真家が、新たなチャレンジをしているのを見ることで勇気づけられるからだ。
飯田は昨年あたりから、たまたま手に入れたベッサ66という旧西独製のスプリングカメラを使って撮影をはじめた。このカメラのレンズにはやや欠陥があって、フィルムの周辺の光量が落ちてしまう。また蛇腹に小さな穴があいていて、きちんと塞いで使わないと光が漏れてしまうことがある。だが、そういうマイナスの要素は、得てして写真家の創造性を拡大することにつながるようだ。飯田のこのシリーズがまさにそれで、結果的に、写っている景色に奇妙なベールのような靄がかかったり、周辺が丸くカットされることで望遠鏡を逆さに覗いたような効果が生じたりしてきていた。
撮影されているのは、ほとんどが飯田の住む荻窪周辺の「家から1キロ以内」の場所だそうだが、あえて旧式のスプリングカメラを使うことで、見慣れた眺めがみずみずしい生気を取り戻しているように感じられる。また、彼はこれまで街や建物の写真を中心に発表してきたのだが、このシリーズには花や樹木などの自然の要素もかなりたくさん入ってきている。「二つに分かれる小道のある庭」というポエティックなタイトルも、特定の「庭」というわけではなく、「庭」を思わせる親密な雰囲気の光景が多く含まれているということのようだ。弾むような撮影の歓びが、じかに伝わってくる写真群だった。

2011/05/24(火)(飯沢耕太郎)

3.11後の若者の行動から社会・文化を考える(「をちこちMagazine」公開収録イベント)

会期:2011/05/26

国際交流基金 JFICホール[さくら][東京都]

宮台真司×津田大介×五十嵐によるトークイベント。ともにtwitterで積極的に動いた宮台と津田は、震災後に旧来のメディアが失墜し、受け身ではなく、人々の自主的な思考と行動が増えることに期待を語った。筆者は、一時の熱狂で終わることなく、災害が持続的な文化の記憶として、いかに残っていくかという関心を述べる。3.11以降というべき、将来も語りつがれるすぐれた文化的な作品が登場することは重要だろう。

2011/05/26(木)(五十嵐太郎)

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