artscapeレビュー
2012年06月15日号のレビュー/プレビュー
SWOON「Honeycomb」
会期:2012/04/27~2012/05/20
XYZ collective(SNOW Contemporary)[東京都]
ニューヨークのストリートアーティスト、SWOON(スウーン)の日本初個展。紙にプリントした人物像を切り抜いて街の壁に貼っていく作品で知られる彼女が、ギャラリーでどんな作品を見せてくれるのか楽しみだった。小さな扉を開けると、室内は暗い。照明を落とし、床に何本かのロウソクを灯している。壁3面にはやはり人物像などをプリントした紙を貼り、正面の壁はハニカム(蜂の巣)の構造体を積み上げて、まるで祭壇のような雰囲気。人物像はどこかアジアの神々を思わせ、ロウソクの火ともども呪術的な空気を醸し出している。タイトルにもなっているハニカムは、アメリカでミツバチが大量発生した「事件」に基づいているそうだ。側面の壁にはハイチ地震で被災した子どもたちとコラボした作品も混じっていて、社会問題に対する意識の高さがうかがえる。ストリートアートから想像したものとはちょっと違う意外なインスタレーションだったが、インスタレーションとしてはそれほど意外性はなく、むしろ優等生的といってもいいくらい。そのギャップが意外だったのだ。彼女にとってストリートアートはアーティストになるためのたんなるステップではなく、実践的なエクササイズの場なのかもしれない。
2012/05/16(水)(村田真)
コープ・ヒンメルブラウ《BMW Welt》ほか
[ドイツ ミュンヘン]
ドイツのインゴルシュタットにて、アウディのモビリティと未来都市に関するコンペの中間発表に出席した。石上純也のチームに関わっていたからである。ほかの参加者もサンパウロ、イスタンブール、ムンバイ、中国、アメリカと、今回は非ヨーロッパ圏の建築家が選ばれていた。それぞれの個性は出ていたが、おおむねOMA的な社会視線のため、石上純也だけが圧倒的に違う切り口になっている。これが終了し、飛行機に乗るまでの時間を使い、20年ぶりのミュンヘンで、コープ・ヒンメルブラウの《BMWwelt》とヘルツォーク&ド・ムーロンの《アリアンツ・アリーナ》を見学した。ロサンゼルスの学校は微妙だったが、BMWはダイナミックな力作である。空間もねじれて裏返り、まわり風景の切り取りも良い。アリアンツ・アリーナも、独特のシルエットからランドマークになっている。
写真:上=コープ・ヒンメルブラウ《BMW Welt》、ヘルツォーク&ド・ムーロンの《アリアンツ・アリーナ》
2012/05/16(水)(五十嵐太郎)
菊池敏正「Neo Authentic」
会期:2012/05/08~2012/05/26
メグミオギタギャラリー・ショウケース[東京都]
頭蓋骨や船底のような有機的形態や、幾何学を立体化した数理模型(杉本博司も被写体にしていた)を精密に彫って彩色した木彫作品。作者は東京藝大大学院の保存修復彫刻研究室を出て、現在東大の総合研究博物館で制作しているという。モチーフはこの総合研究博物館のコレクションだろう。その緻密な超絶技巧にも舌を巻くが、それ以上に澁澤龍彦的な博物学的志向性に興味をそそられるし、それを木という単一素材に封じ込めようとする趣味性に心を動かされる。
2012/05/17(木)(村田真)
アートアワードトーキョー丸の内2012
会期:2012/04/28~2012/05/27
行幸地下ギャラリー[東京都]
全国の美大の卒業・修了制作展から選ばれた30人が出品。うち東京藝大が半数近い14人を占め、以下、武蔵美5人、名古屋芸大3人、京都芸大と東北芸工大が各2人と続き、東京造形、京都造形、金沢美大、愛知芸大が各1人ずつとずいぶん偏っている。多摩美や女子美は一人も入ってない。今年の「五美大展」を見た限り、多摩美は豊作だと思ったのになあ。中園晃二、水野里奈、吉田晋之介の3人はペインティングのツボをよく心得ている。とくに中園の画力は圧倒的。2台の戦車の砲を1本につなげた潘逸舟の模型と映像、義足を軸に細々したモノを集積した片山真理のインスタレーション、美の規範であるギリシャ彫刻を脱臼させた奥村昂子の布のオブジェなど、時流に流されない骨太さを感じさせる作品も印象に残った。ちなみにグランプリは片山真理、準グランプリは潘逸舟でした。
2012/05/17(木)(村田真)
傍嶋崇 展──オモイオモイオモウ
会期:2012/05/08~2012/05/29
第一生命南ギャラリー[東京都]
大作7点の展示。うち6点に人物らしきかたちが見えるけど、とても人物画とはいえない。絵具は全体に厚く色面として塗られているが、表面はフラットではなく刷毛の跡をくっきり残している。ところどころかいま見られる下地の赤やグレーが意外と効果的だ。キャンヴァス代と絵具代だけでン十万円はかかってそうな大作だが(最近そっちのほうが気になる)、それでいて重厚感を感じさせず、むしろ軽快でユーモアさえ感じられる点が最大の特徴だろう。
2012/05/17(木)(村田真)