artscapeレビュー
2013年06月15日号のレビュー/プレビュー
太田侑子展「愛しい神さま」
会期:2013/05/10~2013/06/16
アンシール・コンテンポラリー[東京都]
食卓や洗濯物などごくありふれた日常的な場所に、ちょっと不気味な人形が鎮座する情景を描いてる。手法としてはカメラアイでとらえたスーパーリアリズム風で、主題的にもポップアートに近いが、あえて筆触を残し、手描きならではのニュアンスを伝えている点では、まっとうなペインティングとして評価すべきだろう。
2013/05/25(土)(村田真)
祐源紘史 個展「最初の食事が死の始めである」
会期:2013/05/10~2013/06/07
ギャラリーt[東京都]
ケンタッキーフライドチキンの食べカスの骨で人体の骨格模型を組み立てる祐源。旧作のバレルの上に直立する骨格もあるが、今回は片手で骨を振りかざす新作の骨格もあって、まるで『2001年宇宙の旅』のプロローグに出てくる猿人を思い出す。猿人の骨がチキンとはね。ほかにも油のついた紙を「ドローイング」として額装したり(これは榎倉康二風)、ケンタから多くのネタを引き出している。もう少し有名になったら、ケンタからチキンを無償提供してもらえるといいね。ケンタ以外では、卵のパックに鶏卵と中身を抜いた殻を半々ぐらい並べた作品があった。これだけじゃ作品にならないが、タイトルを見ると《隣はセメタリー》となっていて激しく納得。まさに生と死が隣り合わせになってるのだ。しかもよく見ると、ひとつの殻は割れた部分がドクロのかたちになっている。コンセプトが明快でユーモアがあり、芸も細かい。
2013/05/25(土)(村田真)
志賀理江子「นัดบอด/ブラインドデート」
会期:2013/03/08~2013/06/30
仙台に帰郷したついでに、せんだいメディアテーク近くの古書店、Magellan(マゼラン)に立ち寄ったら、思いがけず志賀理江子の展示を見ることができた。
この「ブラインドデート」は、2009年にタイ・バンコクにアーティスト・イン・レジデンスで滞在中に制作した作品だ。バンコクはバイク天国で、若いカップルたちが相乗りしている姿をよく見る。志賀はそれを見て「これだけ多くのバイクに乗った人がいれば、きっとふざけて彼の目を手で隠して走り、死んだ恋人がいたかもしれない」と考える。実際にはそんな事実はなかったようだが、彼女はいつものようにその夢想(というより妄想)を身体的な現実として定着しようと試みる。バイクに相乗りする100組の恋人たち、「彼らとともに5分間バイクを走らせ」、その姿を至近距離から撮影したのだ。
それら、エクスタシーと死者との間に宙吊りになったような表情の恋人たちのポートレートが、古書店の壁や天井にパラパラと貼られている。バンコクで展示したときのテープや画鋲の穴の痕がそのまま残っているプリントを、隠れん坊の鬼になったような気分で探し歩くのがなかなかいい。実はポートレートの何枚かは、売り物の本の中に「しおり」として挟み込まれていて、それを買った人は持ち帰ることができるという仕掛けになっているようだ。「螺旋海岸」のような大作と比較すれば小品には違いないが、これはこれで、彼女の発想を形にしていくプロセスがヴィヴィッドに伝わってくる興味深い実験作だった。
2013/05/26(日)(飯沢耕太郎)
藤本隆行×白井剛「Node/砂漠の老人」
会期:2013/05/26~2013/05/28
KATT神奈川芸術劇場 中スタジオ[神奈川県]
KAATにて、藤本隆行×白井剛 『Node/砂漠の老人』を観劇する。シュレッダーにかけた大量の紙の山=情報の混沌とした砂漠のオアシスに暮らし、そこから外には出ない老人のもとに、人(=情報?)が訪れてはまた去っていく。生の身体とデジタル制御された映像テクノロジーが重なり、そして構造のレベルで現代音楽が融合し、やがて再生を想起させるフィナーレへ。あいちトリエンナーレでは、この進化版を上演する予定という。
2013/05/26(日)(五十嵐太郎)
「小沢剛 高木正勝 アフリカを行く」展─日本とアフリカを繋ぐ2人のアーティスト─
会期:2013/05/25~2013/06/09
ヨコハマ創造都市センター[神奈川県]
ヨコハマ創造都市センターの小沢剛/高木正勝「アフリカを行く」展へ。高木はアフリカの映像をもとに美しいイメージとリラックスできる場を提供し、小沢剛は福島生まれの野口英世がガーナで研究したことをもとに、フィクショナルなキャラクター、Dr. Nを捏造すると同時に、福島とアフリカにおいて制作したベジタブル・ウェポンのシリーズを展示する。前者は素直に美しいと思うが、個人的には後者のアートがもっている毒がいい。
2013/05/26(日)(五十嵐太郎)