2021年12月01日号
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artscapeレビュー

大阪アート能 新作能「水の輪」

2010年01月15日号

会期:2009/12/26

大阪市中央公会堂[大阪府]

「羊飼いプロジェクト」の活動を通じて、これまで数多くの劇場舞台やワークショップを手がけてきた井上信太と、重要無形文化財総合指定保持者で能楽師・山本章弘のコラボレーションによる新作能。いったいどんな舞台になるんだとワクワクしながら見に行った。「水都大阪2009」の最終日(10月12日)にお披露目公演があったのだが、今回は会場を大阪市中央公会堂に移しての再演。物語自体は、汚染された水の浄化という環境問題をテーマにしたベタな内容なのだが、井上さんの舞台美術をはじめ、一般募集の子どもたちが出演するのもこの舞台の見どころのひとつだった。事前に行なわれたワークショップで制作されたという衣装や、頭に鳥のデザインの天冠をつけてぞろぞろと登場した子どもたちがとにかくかわいい! しかも彼女ら(子ども)が扮する「水鳥」のセリフはよく聞いてみると大阪弁だ。思わず笑ってしまう、そんなチャーミングな要素もいっぱいの舞台なのだが、それだけではない。笛や太鼓、地謡などをふくめ他の出演者はすべてプロ中のプロ。じつに、目も耳も釘付けになってしまう音と舞の圧倒的な迫力に、ライブの能のダイナミズムと感動を改めて知る機会だった。そしてなによりも、それまで縁遠かった人々をつないでいく井上信太の自由な発想とそのの力に脱帽。あくまで平面のアーティストとして活動を続けているが、その表現からはじつにさまざまな可能性がうかがえる。

2009/12/26(土)(酒井千穂)

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