2020年10月15日号
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artscapeレビュー

出発──6人のアーティストによる旅

2010年01月15日号

会期:2009/12/19~2010/02/07

東京都写真美術館2階展示室[東京都]

東京都写真美術館恒例の「日本の新進作家展」の第8回目。出品者は尾仲浩二、百瀬俊哉、石川直樹、百々武、さわひらき、内藤さゆりである。さわひらきの展示は部屋の中でミニチュアの飛行機が発着する映像作品だが、ほかは「新進作家」たちの旅をテーマにした写真作品が展示されている(尾仲浩二を「新進作家」の枠に入れるのにはかなり違和感があるが)。
こうしてみると、石川直樹の「Mt. Fuji」のシリーズは別にして、旅のあり方が以前とはずいぶん違ってきているように感じる。未知なるものを求め、偶発性に身をまかせて世界をさまようようなロマンティックな態度は影を潜め、旅先で見出した風景の細部を、中判─大判カメラで丁寧に定着していくような作品が目につく。落着きや成熟を感じさせる仕事ぶりは、それはそれで悪くないのだが、小さくまとまってしまっている印象は否めない。何よりも写真家の身体性が希薄になってきていることが気になる。
そんななかで、百々武の「島の力」シリーズの、ナイーブだがしっかりと地に足を付けた眼差しが印象に残った(ブレーンセンターから同名の写真集も刊行)。北から南まで、日本全国66の島を訪ねて撮影した労作だが、ゆるやかに流れる島の時間とシンクロしていくなかで、「同じ時代を彼らは、僕は生きている」という認識が少しずつ形をとっていく。北海道・利尻島で撮影された、「生足」の女子高生が吹雪の中に立つポートレートが、その「同時代性」の象徴というべきだろう。

2009/02/21(土)(飯沢耕太郎)

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