2019年11月15日号
次回12月2日更新予定

artscapeレビュー

おとし穴(特集上映「映像の中の炭鉱」)

2010年01月15日号

会期:2009/11/28~2009/12/11

ポレポレ東中野[東京都]

目黒区美術館で催されていた「‘文化’資源としての〈炭鉱〉」展の第三部「映像の中の炭鉱」として催された映像プログラムのひとつ。1962年の勅使河原宏監督作品で、原作・脚本が安部公房、音楽監督に武満徹、音楽に一柳慧と高橋悠治。主演は井川比佐志、田中邦衛、佐々木すみ江、佐藤慶など。物語は炭鉱を舞台にしたサスペンスで、田中邦衛が扮する白いスーツの謎の男が次々と殺人事件を犯してゆく。安部公房=勅使河原宏の映画としては定番の不条理劇だが、この作品がおもしろいのは、生身の身体と死体、そして霊魂をそれぞれ同じ役者が演じ分けることによって、不可解な物語に独特のユーモアを添えているからだ。そのせいか、安部公房=勅使河原宏にしては珍しく笑いながら楽しめる映画になっている。資本家による陰謀を匂わせる結末にはいかにもイデオロギー的な偏りが見られるが、それを上回る映像美を見せるところが勅使河原作品の真骨頂である。ボタ山の鋭い稜線上で群れる野犬の影は、息を呑むほど美しい。

2009/12/02(水)(福住廉)

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