artscapeレビュー

隈研吾建築都市設計事務所『スタディーズ・イン・オーガニック』

2010年01月15日号

発行所:TOTO出版

発行日:2009年10月15日

大量のスタディ模型を並べたギャラリー間の隈研吾展にあわせて刊行されたカタログ的な本である。21世紀に入り、彼は驚くべき勢いで、海外で数多くのプロジェクトを手がけ、事務所のスタッフも急増した。本書では、建築の姿を消していく「コンター」、建築を構成する粒子を操作していく「テクスチャー」、生命体のような形態に向かう「オーガニゼイション」という3つのキーワードによって、近作を分類している。旧作はもちろん、オープンしたばかりの根津美術館という最新作もなく、これからのプロジェクトを紹介しており、いまもっとも脂がのっている建築事務所であることを印象づけるだろう。そう、現在進行形なのだ。本書の冒頭には「消去から有機体へ」というバイリンガルの論文を寄せている。そして1980年代のポストモダンから現在までの活動を振り返りながら、新しい有機的建築が宣言されるのだ。生物のメタファーが語られるが、フランク・ロイド・ライトやメタボリズムとも違う。新しい生物観にたった有機的建築の再定義を試みようとしている。

2009/12/31(木)(五十嵐太郎)

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