2021年12月01日号
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artscapeレビュー

河口龍夫 展 言葉・時間・生命

2010年01月15日号

会期:2009/10/14~2009/12/13

東京国立近代美術館[東京都]

「グループ位」で知られる河口龍夫の回顧展。言葉や物質、時間、生命といったテーマに沿って150点ほどの作品が発表された。鉄の箱に閉じ込められ、発光を決して確認することができない電球や、広辞苑に記載されている言葉をその意味内容に対応した物に添付する《意味の桎梏》(1970)など、おもしろいものもなくはない。けれども、全体的に一貫しているのは、観念過剰な傾向と物としての作品に美しさを欠落させていること。物理学的な関心と作品の形式が一致していないといってもいい。あるいはその違和感が作家のねらいなのかもしれないが、鑑賞者の立場からすれば、たとえば同じ関西出身の野村仁が双方を有機的に統一しているのと比べると、この不一致が気になって仕方がない。電流を熱や光に変換するインスタレーション《関係─エネルギー》(1972)は、広い床面にガジェットを点在させた作品だが、空間の容量にたいして作品のボリュームが足りないため、なんとも侘しい印象を与えてしまっているし、そもそも電流を熱や光に変換するという発想じたいが貧弱である。現実世界の因果関係はもっと錯綜しているし、明確な因果関係を特定できないほど、偶然的であり流動的でもある。放射能を通さない鉛で植物の種子を封印したシリーズにしても、鉛の冷たさが伝わるばかりで、そこに閉じ込められる種子には何の可能性も感じられない。寒々しい未来しか待ち受けていないのではないかと絶望的な気分になってしまう。もちろん明るい未来など思い描くことはもはやできないのは事実だとしても、もう少し温もりのある未来を見てみたいものだ。そのためであれば、だれだって多少の放射能を浴びることも厭わないのではないだろうか。

2009/12/06(日)(福住廉)

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