2022年08月01日号
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artscapeレビュー

「鈴木八郎のまなざし──オリジナルプリント」

2010年01月15日号

会期:2009/12/01~2010/12/23

JCIIフォトサロン[東京都]

鈴木八郎(1900-1985)は戦前からカメラ雑誌の編集者として知られ、1960年代以降は長くペンタックスギャラリーの館長として資料や写真作品の収集に力を尽くした。どちらかといえば、写真の世界の裏方に徹した人だが、今回の作品展を見ると、写真家としてもなかなかの才能の持ち主だったことがよくわかる。写真集としては『わが庭を写す作画の実際』(アルス、1938)しかないが、自らが編集していた雑誌などにも多数の作例写真を発表していた。本展ではその中から、鈴木自身が1920~70年代に制作した「オリジナルプリント」を中心に約60点が展示されていた。
作風として一番近いのは、やや時代は下るが山陰の植田正治だろう。「光と線のリズムに依る音楽──これこそ吾々の選ぶべき唯一の表現形式である」(鈴木八郎「視覚音楽の提案」『芸術写真研究』1923年4月号)と書いているが、画面を視覚的な「リズム」によって音楽的に構成していく手法に共通性を感じる。撮影を心から愉しみ、被写体とのびのびと対話していくような姿勢は、1920~50年代のアマチュア写真家たちに共通するものといえるのではないだろうか。この時代は、まだ写真趣味が生活に余裕のある人たちの特権でありえていたのだ。何を撮っても品のよさが自ずとあらわれていて、目に快くすっと馴染んでくる。

2009/12/22(火)(飯沢耕太郎)

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