artscapeレビュー
Fran oise Choay, “L’urbanisme, utopies et réalités”
2010年01月15日号
発行所:Seuil
発行日:1965年
フランスの都市学者フランソワーズ・ショエ(1925-)による編纂の、都市理論に関するアンソロジー。ユルバニスムという学問を遡及的に明確化し、再定義した本のひとつ。タイトルを訳せば「都市計画(ユルバニスム)、ユートピアと現実」。19世紀から第二次世界大戦までの都市理論で「ユルバニスム」という学問を形成してきたものから重要な論考が集められており、冒頭の「都市計画という問題(L’urbanisme en question)」というショエによる80ページ程度の論考が、本書の意図を説明している。プレ・ユルバニスムとユルバニスム、急進派と文化派という二つの軸によって大きく各テキストの著者が分類されている。例えば、R. オーエンやJ=B. ゴダンはプレ・ユルバニスム急進派、J. ラスキンやW. モリスはプレ・ユルバニスム文化派、T. ガルニエやル・コルビュジエはユルバニスム急進派、C. ジッテやE. ハワードはユルバニスム文化派に分類されている。プレ・ユルバニスムは理想主義的で政治的であるのに対し、ユルバニスムは現実的で建築家によるものが多い。急進派が合理性から特異な解に至るのに対して、文化派は調和的な方向性をもつといえるかもしれない。さらにモデルのないもの、自然派、テクノトピア、人間的都市、都市の哲学などいくつかの項目が加えられている。なお、ショエの次の重要な著作は”La R gle et le Mod le : Sur la théorie de l'architecture et de l'urbanisme”(1980)(未邦訳『規則とモデル:建築とユルバニスムの理論について』)であり、アルベルティとトマス・モアの著作を中心とした流れの中で、さらに包括的な形で、都市建築理論が展開されている。
2009/12/27(日)(松田達)