artscapeレビュー

福山えみ「a trip to Europe」

2010年01月15日号

会期:2009/12/08~2010/12/20

TOTEM POLE PHOTO GALLERY[東京都]

福山えみは1981年佐賀県生まれ。2006年に東京ビジュアルアーツを卒業し、TOTEM POLE PHOTO GALLERYでの個展を中心に作品を発表している。今回の展示は、2009年の夏にフランスのアルル、パリ、ドイツのベルリン、チェコのプラハなどを旅行した時に撮影した写真でまとめた。
なんともつかみ所のない、どんよりした曇り空の下の、どこか寒々しい街の片隅の光景が並んでいる。フェンスや窓枠によって区切られた眺めに固執しているようだが、それがはっきり打ち出されているわけでもない。だが、6×7判(カメラはプラウベルマキナ67)のとりとめのない旅のイメージは、これはこれで目に気持よくおさまって悪くはない。自分がどんな被写体に反応し、たくさん撮影した中からどれを選んでいくのかという基準がはっきりしているからだ。会場に旧作の「月がついてくる」(2008)シリーズをおさめたファイルが置いてあったのだが、日本で撮影されたそれらとヨーロッパの写真の質感がまったく一緒なのに逆に感心した。どこに行っても「自分の眼差し」を保ち続けられるというのは大事なことだ。
とはいえ、このままでは「玄人好み」の、地味だが悪くない写真ということで終わってしまう。むずかしいかもしれないが、もう一歩踏み出して、被写体の幅と表現方法の幅を広げていくべき時期にきているのだろう。

2009/12/13(日)(飯沢耕太郎)

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