2021年12月01日号
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artscapeレビュー

遠藤一郎「愛と平和と未来のために」

2010年01月15日号

会期:2009/10/31~2010/01/24

水戸芸術館現代美術センター[茨城県]

「Beuys in Japan:ボイスがいた8日間」(2009年10月31日~2010年1月24日、水戸芸術館)の関連企画で、遠藤一郎が会期中の46日間、館内の庭園などをひたすらほふく前進をしながら生きているという。何? 高速道路を二時間走らせ、水戸に着くと、黄色いテントが庭に立っていた。確かに遠藤は、すべての前進をほふく状態で行なっていた。こころなしか肌が黒く健康的に見えた。ほふく前進で筋肉がついたのと毎日近所のお弁当屋が差し入れをもってきてくれるそう。ワークショップのあるこの日、ぼくもほふく前進してみた。石畳では肘がすっごく痛くて、芝生では草の匂いにくらくらした。自分が亀にでもなったみたい。遅速はものの感じ方、生き方も変えそう。ほふく前進するだけで世界が違って見えてくる。そう、まさにこうしたところだ。こうしたところに遠藤とボイスの交点があるのだ。弁当屋の差し入れもなじみになったベビーカーを引く母親からの挨拶も、社会という彫刻(ボイス曰く「社会彫刻」)を少しずつ別の形へと変化させる、いわば槌の一撃だ。ほふく前進に参加したぼくも遠藤の彫刻の一部となった。しばらく続いた脇腹の筋肉痛も一撃の成果、この痛みは遠藤のつくろうとする「ザ・ビッグ・リング」へと繋がっている気がした。

2009/12/26(土)(木村覚)

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