artscapeレビュー

横田大輔「indication」

2011年03月15日号

会期:2011/02/07~2011/02/24

ガーディアン・ガーデン[東京都]

横田大輔は第2回写真「1_WALL」展(2010年)のグランプリ受賞者。小山泰介、和田裕也、吉田和生ら、僕が「網膜派」と呼んでいる写真家たちに共通する作風の持ち主だ。デジタルカメラを使い、あまり強固な意味を派生しない被写体の触覚的な要素を強調して撮影し、アトランダムに並べていく。結果として、観客は網膜の表層を引きはがしてそのまま提示したような画像の集積を見ることになる。横田の場合、その作業はかなり意識的に為されていて、どうやら動画モードで撮影した画像から選択してプリントしているようだ。ボケ、ブレ、画像の傾き、ストロボ光による極端な明暗のコントラストなどを多用することで、日常的な視点に違和感を生むのも彼らに共通する手法だ。
大小のプリントを虫ピンで壁に止めていく展示構成は、なかなかスタイリッシュで決まっている。悪くはないのだが、ただセンスがいいだけではこれから先が難しくなりそうだ。展覧会に合わせて発行された小冊子に彼が書いていたエピソードが面白かった。電車の中でたまたま見かけた男女を、横田はてっきり兄妹だと思っていたのだが、実はまったくかかわりのない女の子とストーカー的な男の組み合わせだったというちょっと不気味な話だ。こういう日常的なズレの感覚と「網膜派」の手法を、もっと積極的にかかわらせてみるのはどうだろうか。横田にはいい観察力と、言葉を的確に綴る才能も備わっているようなので、逆に画像の意味づけを強めて「物語」を構築していくと、独特の作風に育っていきそうな気もする。

2011/02/09(水)(飯沢耕太郎)

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