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artscapeレビュー

高嶺格:とおくてよくみえない

2011年03月15日号

会期:2011/01/21~2011/03/20

横浜美術館[神奈川県]

最初の展示室で最初に見た作品は、縦長で全面が朱色、上のほうに3つの白い十字形を配した大きめのタブローだった。まずここで頭のなかは「???」。キツネにつままれた状態で歩を進めると、植物パターンの装飾あり、ストライプ模様の抽象あり、フランク・ステラばりのシェイプトキャンヴァスもあって、じわじわと口元がゆるんできた。これは毛布ではないか。毛布をパネルに張ってタブロー化し、それらしきタイトルと作品解説をつけたものなのだ。いやーこれはハメられた、というより、ツボにハマってしまった。別にこの手の作品は珍しいものではないが、ここでは観客が1点1点見ていくうちに徐々に気づいていくよう配置や点数、見るスピードまで計算し、そこで絵画とはなにか、美術館はなにをどのように価値づける場所なのかといったことにまで思いを巡らせるように仕向けている、その手法がじつに巧みなのだ。次の展示室は、2005年の横浜トリエンナーレにも出品された《鹿児島エスペラント》の新ヴァージョン。トリエンナーレのときはゆっくり見る雰囲気ではなかったので、ここでは心ゆくまで堪能。床に土や廃品が置かれ、そこにレリーフ状の文字が並べられ、スポットライトがその文字を追って文章を読み取らせる仕組みだが、これもスポットライトのスピード、音楽のリズム、文章から読みとる意味が見事にシンクロしていた。その後も新作・旧作いくつかあったが、もうこの2部屋で十分満足してしまった。

2011/02/10(木)(村田真)

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