artscapeレビュー
荒川望 展
2011年03月15日号
会期:2011/01/24~2011/02/05
CUBIC GALLERY[大阪府]
荒川さん、といえば、和紙に樹脂を染み込ませた支持体にアクリル絵の具で花を描く作家というイメージがあったのだが、今回の発表ではそのタイプは一部で、モチーフにも以前とは印象が異なるものがあり、制作の変化を感じた。サイズの異なるパネルを組み合わせた、会場でもっとも大きな《ずっと行きたかった場所へ》は見る角度によって色の重なりや筆跡の表情が変わって見えるのだが、それは電車の車窓から眺める風景のようでじっくりと見ていると心地よい高揚感を覚える。色が溶け合い重なり、全体に薄い靄のかかったような曖昧な空気感が漂う作風は、一見、色彩もモチーフも柔和で緩やかな印象だが、今回の展示はよく見ると、流れる水の向こう側にあるものを描いているような、速度と透明感を強く感じるものも多く新たな発見をした気分。草木が芽吹く春が待ち遠しくなるような個展だった。
2011/02/05(土)(酒井千穂)