artscapeレビュー

西野壮平「WANDERING THE DIORAMA MAP」

2011年03月15日号

会期:2011/02/15~2011/04/02

EMON PHOTO GALLERY[東京都]

西野壮平は2005年の写真新世紀優秀賞(南條史生選)の受賞者。都市をさまざまな角度から撮影した写真を、コラージュの手法で繋ぎ合わせて再構築していく「DIORAMA MAP」シリーズを一貫して制作し続けている。当初はオリジナル作品をそのまま展示していたのだが、その後スキャニングして大画面にプリントアウトするようになった。大阪、東京など日本の都市からスタートしたこのシリーズも、ニューヨーク、パリ、ロンドン、イスタンブール、香港などに撮影範囲が拡大し、現在ではすでに10都市の「DIORAMA MAP」が完成しているという。基本的にその手法に変わりはないのだが、最近は画面のスケールが一回り大きくなり、より緻密で迫力のあるコラージュ作品に仕上がってきた。このような精巧な工芸品を思わせる技巧の冴えは、日本の現代写真を特徴づける作風として認知されつつあるのではないだろうか。西野もロンドンでほぼ同時期に個展が開催されるなど、その技術力と構想力がアメリカやヨーロッパでも高く評価されつつある。
注目すべきなのは、今回のEMON PHOTO GALLERYの個展でもその一部が展示されていたカラー写真による新作である。「Night」シリーズでは、都市の夜景を撮影してコラージュする。また「i-Land」シリーズではさらに積極的に複数の都市のイメージを自由に繋ぎ合わせ、「空想の都市を表象する」実験を試みている。創作意欲の高まりとともに、写真作家としての次のステップに踏み出していこうとしているのではないだろうか。そろそろ、作品集の刊行も視野に入れていってほしいものだ。

2011/02/26(土)(飯沢耕太郎)

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