artscapeレビュー

小野寺南「untitled」

2011年03月15日号

会期:2011/02/22~2011/02/27

企画ギャラリー・明るい部屋[東京都]

東京・四谷の企画ギャラリー・明るい部屋は、3月20日のクロージングに向けてメンバーの連続個展を開催している。そのうち小野寺南の「untitled」を見て、この2年の間に彼の表現力が格段に上がっていることがわかった。
今回の展示では、雪がうっすら積もる雑木林のような場所を6×7の中判カメラでやや引き気味に撮影した写真が並んでいた。黒枠のフレームに大全紙に引き伸ばした14点のプリントを余白なしでおさめ、ゆったりと間をとって壁に掛ける。部屋の中央には白布で覆われた小さな机が置かれ、その上に天井から2個の裸電球が吊るされている。その会場構成にまったく隙がなく、見事に決まっているのは、何度も個展を開催してこの部屋の空間を知り尽くしているからだろう。プリントはかなりの黒焼きで、暗部は闇に沈み、グレーの部分は電球の光の具合でむしろ銀色に輝いて見える。樹の枝や草むらがリゾーム状に絡み合う画面の細部に目をこらしていくうちに、小野寺が息を詰めてこれらの眺めを見つめている様子が浮かんできた。むろん重い鬱屈を抱え込んでいるのだが、それがシャッターを切るごとに解放され、少しずつ薄らいでいくのだ。
寒々とした風景に、それでも春の気配を感じとれるような気分が伝わってくる、心に染みる写真たちだった。

2011/02/27(日)(飯沢耕太郎)

2011年03月15日号の
artscapeレビュー