artscapeレビュー
ラジオ広島ツアー/「建築系フォーラム2011 コンペのコツ」
2011年03月15日号
会期:2011/02/19~2011/02/20
平和記念公園、平和記念聖堂、ホテルフレックス、なぎさ公園小学校、広島環境局中工場、広島市現代美術館[広島県]
今回、広島の学生団体scaleの吉岡佑樹が広島ツアーをコーディネイトしたが、バスを借り切っての予想以上に充実した内容だった。すでに何度も広島を訪れていたが、普段は見ることができない、なぎさ公園小学校と基町高校の内部、広島市現代美術館のバックヤード、村上徹と宮森洋一郎の事務所を見学したからである。
黒川紀章が設計した広島市現代美術館では、学芸員に案内していただいた。興味深いのは、ホワイトキューブが連続する企画展のための空間と、作品を想定して部屋ごとに個性がある常設のための空間を、10年ちょっと前に入れ替えたということ。つまり、プログラムを交換したのである。日本では「現代美術館」の先駆けとして登場したが、やはりアートそのものがどんどん変化していく。現在は多様なスペースを用意した方が、企画展に向くという。さて、開催中の「サイモン・スターリング 仮面劇のためのプロジェクト(ヒロシマ)」展は、その土地の物語をつむぎだす、リサーチ的な現代アートである。木の船を壊して燃料にするウロボロスの蛇的な作品をのぞくと、見るだけでは全容が理解できない、すなわち解説を必要とする作品が多い。日本では仮面劇を構想し、1985年の阪神優勝、バースの活躍、カーネル・サンダースのエピソードを用いていたが、学生がこれを架空のはなしだと思ったことに驚かされた。また飯沢耕太郎によるきのこアート研究所展も興味深い。ジョン・ケージや草間彌生から始まって、とよ田キノ子のキノコグッズコレクションまで、いかにアーティストがキノコの不思議さに魅了されてきたかをたどる。
20日の午後は、広島国際大学にて建築系フォーラム2011「コンペのコツ」が開催された。
五十嵐は「コンペと審査員」と題し、自分が審査する立場と、審査される立場との両面からコツを紹介したほか、建築系ラジオのメンバーがコンペをめぐってさまざまな切り口で語ったが、とくに南泰裕の負けることと持続することのはなしは印象深い。コンペでは、ひとりの勝者をのぞき、ほとんどの人が負けるわけで、それでもなお腐ることなく、建築家を持続することが、むしろ大事なのではないかと言う。
2011/02/19(土)(五十嵐太郎)