artscapeレビュー
三木義一「サイレント」
2011年04月15日号
会期:2011/03/01~2011/03/06
企画ギャラリー・明るい部屋[東京都]
企画ギャラリー・明るい部屋のクロージングの展示は、先週の小野寺南に続いて今週は三木義一の回だった。中判の6×9カメラで撮影されたカラー風景写真が12点、等間隔に壁にピンで留められている。これまでのモノクロームの風景、ポートレートとはがらりと作風を変えてきた。聞けばカラープリントを暗室で本格的に制作するのは2回目ということで、その割には色味のコントロールがきちんとしていて、気持ちのいい作品に仕上がっていた。
住宅地、住宅造成地、海辺、道路脇のごみ捨て場のような場所など、かなり幅広く被写体を選んでいる。どことなく、1980年代に流行した「ニューカラー」の日本版を思わせるところがある。本家のアメリカの「ニューカラー」がどちらかといえば乾いていてくっきりとした風景描写だったのと比較すると、同じく日常的な光景にカメラを向けていても、日本の「ニューカラー」は湿り気を帯び、ぺらぺらのチープさが浮かび上がることが多かった。三木自身が意識しているわけではないだろうが、まるで先祖帰りのようにその空気感を共有しているのが興味深い。四半世紀の時を隔てても、日本の風景のあり方にそれほどの違いはないのだろうか。
「世界の騒がしさと/私の騒がしさと/写真の静けさと」。これは作品の横に添えられていたテキストだが、あえて心を鎮め、「静けさ」へと躙り寄っていこうとしている写真家の姿勢が、折り目正しい写真のたたずまいによく表われている気がした。
2011/03/02(水)(飯沢耕太郎)