2021年04月15日号
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artscapeレビュー

高橋万里子「Night Birds」

2011年04月15日号

会期:2011/03/05~2011/04/22

photographers’ gallery[東京都]

photographers’ galleryのメンバーのひとりとして、高橋万里子は2002年以来コンスタントに作品を発表し続けてきた。2009年には同ギャラリーで4回にわたって「月光」シリーズを展示し、人物、人形、植物、剥製などを、室内灯だけでぼんやりと浮かび上がらせて撮影する独特な作品のスタイルを完成させた。
今回の「Night Birds」も、基本的にはその延長線上にある。被写体になっているのはさまざまな鳥の死骸で、フライフィッシングの毛針の材料としてその羽が用いられるのだという。極彩色の羽を持つ鳥たちは、宙吊りにされているようなやや不安定な構図で画面におさめられている。蛍光灯などのコントラストの強い光が、そのどことなく不吉なフォルムを照らし出し、ブレやボケが強調されることでより禍々しい印象が強まる。あたかも死のなかから強引に生の気配を引き出そうとするようなその手つきによって、鳥の死骸は宗教的な儀式で使用される呪物のようにも見えてくる。まだどうなるか予測はつかないが、「月光」シリーズの発展形として今後の展開が期待できそうだ。
なお、同ギャラリーの向いの部屋にリニューアル・オープンしたKULA PHOTO GALLERYでは、高橋のもうひとつのシリーズ「lonely sweet」が展示されていた。こちらはクリームソーダ、アイスクリーム、パフェ、果実類などの「sweet」が、やはり同じ手法で撮影されている。一見おいしそうだが、実はすべて食堂のショーケースなどで使われるサンプル食品だという。不安感よりは、どちらかといえば安らぎや懐かしさを感じさせるシリーズで、これを見ても高橋の表現力の幅が大きく広がってきていることがわかる。

2011/03/10(木)(飯沢耕太郎)

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