2021年04月15日号
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artscapeレビュー

永瀬沙世「WATER TOWER」

2011年04月15日号

会期:2011/03/25~2011/04/14

Nidi gallery[東京都]

永瀬沙世はファッションや音楽関係の雑誌で主に仕事をしている写真家だが、このところギャラリーでも意欲的に作品を発表するようになってきた。青山から渋谷に移転してきたNidi galleryで開催された今回の個展でも、面白い切り口の作品を見ることができた。
「WATER TOWER」といえば、すぐに思い出すのはドイツのベルント&ヒラ・ベッヒャーの同名の作品である。いわゆる「ベッヒャー派」の典型というべきこのシリーズでは、ドイツ各地で撮影された給水塔が整然と、あたかも標本のように並んでいる。カメラアングル、撮影条件を同じにすることで、それらのフォルムの微妙な「差異と反覆」が浮かび上がってくるのだ。このベッヒャー夫妻の作品を知っているかどうかで、永瀬の「WATER TOWER」の見え方も違ってくるのではないだろうか。こちらは大判カメラによってきっちりと撮影されたベッヒャー夫妻の「WATER TOWER」とはまったく正反対で、ブレや揺らぎを含んだカラーのスナップショットである。中央がくびれている、ちょっとユーモラスな形の給水塔は、なんだかお伽の国の建築物のようだ。そのメルヘンティックな佇まいの風景に、さりげなく女の子の後ろ姿や足の一部を配するセンスが心憎い。永瀬流のランドスケープとして、きちんと成立しているのではないかと思う。
なお、スウェーデンの出版社LIBRARYMANから刊行されたばかりの写真集『Asphalt & Chalk』も、会場で特別販売していた。こちらは、チョークで道や壁に落書きしている女の子の童話風のスナップ。作品の幅が、いい感じに広がりつつあるのがわかる。

2011/03/25(金)(飯沢耕太郎)

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