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夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史 四国・九州・沖縄編

2011年04月15日号

会期:2011/03/08~2011/05/08

東京都写真美術館 2F展示室[東京都]

日本写真史の「夜明けまえ」、幕末から明治初期の状況を検証しようという「知られざる日本写真開拓史」のシリーズも、関東編(2007年)、中部・近畿・中国地方編(2009年)に続き、今回の四国・九州・沖縄編で3回目になる。薩摩藩主・島津斉彬と家臣たちによる先駆的なダゲレオタイプの研究(1857年)、長崎の上野彦馬による写真館開業(1862年)など、この地方は日本の写真発祥の地のひとつと言ってよい。今回の展示でも、なかなか面白い写真資料が集まっていた。
例えば、長崎大学附属図書館が所蔵する全3冊の「ボードイン・アルバム」。長崎養生所(医学伝習所の後身)で教官をつとめていたアントニウス・F・ボードインと、弟の駐日オランダ領事アルフォンス・ボードインが蒐集した写真を中心に貼り付けたもので、フェリーチェ・ベアトが撮影した「占拠された長州藩前田御茶屋低台場」(1864年)など、貴重な写真、イラストが含まれている。普通このようなアルバムの展示では、開いたページだけしか閲覧できないのだが、複写した全画像を壁面にプロジェクションして、他のページも見ることができるようになっていた。ほかにも名刺判肖像写真の台紙裏のデータを読み取れるように、アクリルケースに立てて展示するなど、全体的に見やすくする工夫が凝らされている。普通の観客は古写真にはあまり馴染みがないので、このような細やかな配慮は大切ではないかと思う。
次回は東北・北海道編の予定だが、さらに幕末・明治初期の日本写真の全体像を浮かび上がらせる総集編も視野に入れていかなければならないのではないだろうか。

2011/03/07(月)(飯沢耕太郎)

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