artscapeレビュー

東京綜合写真専門学校卒業制作展2011

2011年04月15日号

会期:2011/03/16~2011/03/21

BankART Studio NYK 2B gallery[神奈川県]

1000年に一度という東日本大震災は、アートの世界にも大きな影響を及ぼしつつある。展覧会やイベント開催の延期、あるいは中止の知らせが各地から相次いで聞こえてくる。そんななかで横浜のBankART Studio NYKは、事情が許す限り平常通りの運営を続けていくことを決めた。津波が対岸の岸壁を洗うまで押し寄せたという状況において、これは英断だと思う。むしろ「こんな時だからこそ」、妙な自粛など考えずに普通に活動を続けていくことが大事なのではないだろうか。
そのBankARTの2Fでは、東京綜合写真専門学校の卒業制作展がスタートした。といっても卒業生全員ではなく、第一学科(昼間部)2名、第二学科(夜間部)6名によるグループ展だ。数は少ないが、それぞれしっかりと自己主張していて面白かった。この学校の特徴は、コンセプトを固めた作品作りをかなり強く打ち出していこうとしていることで、学生たちの展示に対する意識も高い。また会場に置かれているポートフォリオもよくまとまったものが多かった。藤田和美の雨や雷のようなサウンドと写真を組み合わせた「line/blank」、鈴木真理菜の身体と世界の関係を問い直すセルフポートレート「境界」、墨谷風香の批評的な視点を感じさせる「ポートレイト(知っている人と知らない人)」、佐藤佳祐の周囲を黒く落とした自動販売機のシリーズ「machine」など、「見せ方」をきちんと意識しつつ作品が構築されていた。さらなる展開を期待したい。
なおBankARTでは、「ポートフォリオをつくる」をテーマにワークショップを開催している。その「飯沢ゼミ」も平常通り開講され、約半分10名の受講者が集まった。そのうち2名が「3・11」の日記的なドキュメントを課題として出してきた。これもとても大事なことだと思う。写真家はどんな状況においてもまずは撮るしかない。いまこそ「写真の力」が必要になる時ではないだろうか。

2011/03/16(水)(飯沢耕太郎)

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