artscapeレビュー

せんだいデザインリーグ2011 卒業設計日本一決定戦

2011年04月15日号

会期:2011/03/06~2011/03/11

川内萩ホール[宮城県]

今回、最終の審査で選ばれたファイナリストは、10人中8人がセミファイナルで票を入れた学生だったので、いつもより多く、基本的にどの案も応援していたが、発表と討議を繰り返すなかで、どんどん魅力が引き出されたのが、日本一になった芝浦工業大学の冨永美保だった。逆にアシストのつもりの質問を受けとれない学生もいて、そうした場合は脱落していく。日本二に選ばれた日本大学の蛯原弘貴の工業化住宅は、セミファイナルで3点を入れた作品だったが、敷地の観察や建築的な発見が足りないと判断し、最後は票を入れなかった。
日本三となった明治大学の中川沙織は、いまの建築はやさし過ぎると批判し、人間はきわめてパンクで、会場は盛り上がったが、建築はそこまで過激な空間でない。人間コンテストなら1位だが、SDLは建築を競う場である。中川インパクトのあおりを喰らい、興味深い空間のシステムを提案した東京理科大学の大和田卓の住華街がベスト3から落ちたのは、残念だった。
審査に関して、テクトニックな案をもっと選べという意見が聞かれたが、だからといってアファーマティブ・アクションのような優遇措置をとるのは難しい。筆者は、例えば、郊外化や情報化のタイプの案を優先して選ぶ、藤村龍至的な立場はとれない。それこそ建築は多様であり、そうでない案の学生に失礼になるからだ。
筆者の著作は、建築と社会に関するテーマだが、建築やアートの審査を行なう場合、いったんそれは解除する。そうでないと、キリンアートプロジェクト2005において石上純也のテーブルを選べなかっただろう。自分の偏った好みを認識しつつも、なるべくバランスをとる。
つまり、審査に望む際、昨日まで考えていたことを補強したり、その啓蒙に役立つ作品よりも、むしろその日まで自分が考えてもいなかったような気づきを与えるものを選ぶ。使いまわしの説明が通用せず、それがなぜ良いのか、その場で言説を新しく組み立てる必要があるものだ。
ともあれ、今から思えば、全国から学生が集まる、この時に震災が起きなくてよかった。10周年を迎えたせんだいメディアテークは一部損壊し、模型の返却も遅れたが、来年は復活のイベントとして、卒業設計日本一決定戦が再開されることを願う。

2011/03/06(日)(五十嵐太郎)

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