2021年04月15日号
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artscapeレビュー

春木麻衣子「photographs, whatever they are」

2011年04月15日号

会期:2011/02/26~2011/05/08

1223現代絵画[東京都]

春木麻衣子は2010年5月~6月のTARO NASUでの個展「possibility in portraiture」から、それまでの風景中心の作品に加えて「ポートレート」を取り込んだ作品を発表するようになった。といっても、画面のほとんどが白、あるいは黒で占められている彼女の作品において、人間のイメージはそれほど大きく扱われてはいない。だが「ポートレート」という主題の導入によって、抽象度の高い彼女の作品に観客がアプローチしやすくなったことはたしかだ。
今回の展示には、ニューヨークのアメリカ自然史博物館のジオラマとそれを見る観客を題材にした「neither portrait nor landscape」(2010)をはじめとして、いくつかのシリーズが含まれているが、注目すべきは新作の「selfish portrait to you and me and others」(2011)だろう。白いガラス入りのフレームのようなもので画面が大きく区切られ、その表面に「you and me and others」の姿が映り込んでいる様子を撮影している。つまり、この作品は作家のセルフポートレートでもあるということで、これは新しい展開だと思う。「あなた─私─他者」との関係のあり方を、さまざまな形で確認していくきっかけになるのではないだろうか。
もうひとつ興味深いのは、春木の黒を基調とした作品を眺めていると、フレームのガラスに自分の顔が映っていることに気がつくことがあることだ。つまり「あなた─私─他者」の関係項のなかに「観客」も包含されてしまうということで、そのことをより強く意識すれば、さらに面白い作品が生まれてきそうな気がする。

2011/03/03(木)(飯沢耕太郎)

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