2021年04月15日号
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artscapeレビュー

プリズム・ラグ──手塚愛子の糸、モネとシニャックの色

2011年04月15日号

会期:2011/03/17~2011/06/12

アサヒビール大山崎山荘美術館[京都府]

目に「見える」色彩を追求した印象派のモネ、シニャックの作品とともに手塚愛子の作品が展示された本展は「虹色」というキーワードのもとに構成されている。織物からその縦糸や横糸を引き出して分解したり、それを再構成するという手法で、表面には見えない時間を示そうとする手塚の作品は、精緻な作業とそこに表出した糸の色数、繊細な様態自体がそもそも説得力のある美しさで、見入ってしまうものも多いのだが、今展では手塚がその制作において重視している「ズレ」という観点もまた印象に残る展示作品で示されていて、じっくりとあじわいたい空間となっていた。手塚は、数々の選択肢のなかからひとつだけが選ばれていくなかで出来上がった歴史としての織物を解くことで、そこには同時に、切り捨てられた選択肢と可能性の数々が潜む歴史があることを提示しようとしている。虹色というテーマとともに、普段われわれが見えていないものを出現させようとするその装置は、希望的な光を感じさせるものでもあった。天気のよい明るい日にもう一度見に行きたい。

2011/03/17(木)(酒井千穂)

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