2020年01月15日号
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artscapeレビュー

2011年05月01日号のレビュー/プレビュー

竹原義二/原図展 素の建築

会期:2011/03/09~2011/04/10

大阪くらしの今昔館[大阪府]

展覧会場に入ると、どこからともなく木の香りが漂う。久しく忘れていた匂いだ。続いて、無垢の木材からなる剥き出し=「素」の架構空間、素材と構造それ自体が目の前に立ち現われ、リアリティをもって迫ってくる。建築家自身が言うように、ここには「逃げ」がない。材質の魅力・木組みの技(本展では建築に用いられている木組み工法を実際の映像でみることができる)言うなれば竹原義二の美学が集約されている。建築家と職人の仕事すべてを集約する、ありのままの顕わな「構造」が生み出す迫力を、架構空間の中を歩き、柱を触って確かめた。竹原の事務所ではいまでも手で図面を引くという。たくさん展示された竹原の手描き原図には、建築家の熟慮と苦労の痕跡が刻み込まれている。スチール模型(100分の1スケール)の多さは、竹原のこれまでの設計活動の長きを感じさせる。もうひとつ展示のなかで興味深かったのは、造形作家・有馬晋平のスツール《スギコダマ》。これもまた、一つひとつ異なる素材が活かされ、手の技が根幹を成し、使い込むことで味わいを増す点で、竹原の「素の建築」の思想と重なりをみせている。簡素でいて有機的なフォルムは、スギの「木霊(木魂)」を宿した「小玉」を意味する。すべすべとした柔らかなテクスチュアは、作り手の確かな技術に裏打ちされている。いすに刻まれた年輪は見た目にもうつくしいばかりか、手で触れれば自然が創りだす刻みを感じ取ることができる。「全ては無に始まり有に還る」「建築は何も無い場所から立ち上がる」。これは竹原の設計思想だが、建築が建ちあがるまでのすべての営み──ことに人との協働──年月と共に生き続ける建築のあるべき道を彷彿とさせるその構えには、胸を打たれる心地がする。思考と素材と手技が織りなす美のありようを実感した展覧会だった。[竹内有子]

2011/04/06(水)(SYNK)

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田中偉一郎 個展「平和趣味」

会期:2011/03/05~2011/04/16

Yuka Sasahara gallery[東京都]

田中偉一郎の新作展。ブランコを勝手に組み換える《公園革命》シリーズや、民芸品をもとにした《民芸ロボ》シリーズなど、田中の偉才を遺憾なく発揮した、(いい意味で)くだらない作品ばかりで、安易に社会性やメッセージ性へと偏らない潔さもすばらしい。なかでも秀逸だったのが、《ラジオ体操アドリブ》。公園で行なわれているラジオ体操に紛れ込み、周囲と同じように音楽に合わせながらも、滅茶苦茶な身体運動をアドリブで披露した映像作品だ。身体動作をラジオ体操と同一化させないことを命題としつつも、時折垣間見せるシンクロの瞬間や、わずかな躊躇によって一瞬生まれる変な間が、なんともおかしい。

2011/04/07(木)(福住廉)

鍾局──生きることの枠で/西村のんき──のんきの戒壇めぐり

会期:2011/03/28~2011/04/02

Gallery AMI & KANOKO[大阪府]

自分をカボチャだと思う画家。闇の中で光と戯れ、光の中で闇と戯れ、私たちは自由に次元を飛び越え、宇宙を知るというアーティスト。日本と韓国を行き来する二人の作家の展覧会だ。韓国の作家・ 鍾局は《カボチャ》と題された絵画連作8点を出品、西村のんきは《のんきの戒壇めぐり》というインスタレーションを展示していた。木炭の黒で縁取られた白いカボチャ。ごつごつしていて、存在感を放つ。西村の作品は、6畳の和室いっぱいに二重に張り合わせた紙で迷路をつくったもの。その迷路(紙)には蓮や蛙、龍などが描かれている。それぞれの作品も興味深かったが、とくに面白かったのはギャラリーを訪ねた日に行なわれていた「評論を書くことを考えてみる。」会(共催:大阪大学文学部美学研究室)。展覧会の作品を実際に見て、評論文を書き、それを作家のまえで発表する。物書きにとっては冷や汗が出る作業だろうし、作家たちも同じ思いかもしれない。2人の作家と4人の発表者、多くの聴衆による白熱した議論は4時間も続いた。もちろん決まった答えはない。つくることと見ること、そして伝えること。おのおのの思いはどこまで共有でき、どこまで共有すべきだろうか。[金相美]

2011/04/09(土)(SYNK)

新野洋 展「いきとし“いきもの”」

会期:2011/04/09~2011/05/07

YOD Gallery[大阪府]

新野は、自宅近辺の山中で四季の植物を採集し、それらからインスパイアされた架空の昆虫を制作している。植物から型を取り、成形したシリコンを組み合わせた作品は、まるで植物の精のよう。今までに見たどの作品とも似ておらず、まったく新たな体験に軽い興奮を覚えた。また、採集した植物を春夏秋冬に分類し、そのなかに擬態のように作品を紛れ込ませる展示方法も秀逸だった。四季の移ろいに合わせて制作されるため、点数が限られるのが難点だが、それを補って余りある魅力的な作品だった。

2011/04/09(土)(小吹隆文)

鹿島茂コレクション1 グランヴィル──19世紀フランス幻想版画展

会期:2011/02/23~2011/04/10

練馬区立美術館[東京都]

仏文学者の鹿島茂のコレクションを紹介する企画展。フランスの幻想版画家、グランヴィルによる挿絵がまとめて展示された。石版画の多くは世情を風刺したもので、動物を擬人化した図像によって、その風刺の力を効果的に引き立てていた。《大自由狩り》(1832)という石版画は、下半身は人間だが、上半身は「LIBERTE」というそれぞれのアルファベットに化した生き物を、軍隊がライフル銃や大砲で狙い撃ちにする光景を描いたもの。社会風刺の伝統を忘れつつある日本のクリエイターにとっては、見習うところが多い作品である。

2011/04/10(日)(福住廉)

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2011年05月01日号の
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