artscapeレビュー

2012年10月15日号のレビュー/プレビュー

ビデオ・パーティー2012

会期:2012/09/21~2012/09/30

アートラボあいち4階[愛知県]

愛知芸術文化センターで行なわれる「アーツ・チャレンジ」の審査のため、昨日から名古屋に滞在。今日は審査が早めに終わったので帰る前にアートラボに寄ってみたら、全館を使って名古屋周辺の美大と連携した展覧会をやっていた。愛知芸大や名古屋造形大などの展示を冷やかし半分で見ていたら、なつかしい名前に出会った。4階で「ビデオ・パーティー」と称して、名古屋学芸大の映像メディア科と大阪成蹊大の情報デザイン学科の学生や卒業生による映像作品を流しているのだが、これをキュレーションしているのが瀬島久美子さんといって、もう30年以上も前に西武美術館で知り合った音と映像のプロデューサーだ。うわー久しぶり、当時はまだビデオアートの勃興期だったからなあ、隔世の感がある。いまは名古屋学芸大学の特任教授を務めているらしい。しばし感慨にふける。

2012/09/23(日)(村田真)

伝統芸能伝承館《森舞台》ほか

[宮城県]

佐藤邸を出発し、まず建築学会賞となった《森舞台》を訪れる。隈研吾がルーバーを活用する現在のスタイルに移行しつつ、地方で作品を展開した時期の作品である。登米のエリアはみやぎの明治村と呼ばれるように、幾つかの近代建築が残る。旧尋常小学校は明治20年代ながら、外光を多く採り入れるべく透明性の高い空間をもち、きわめてモダニズム的だ。次に裁判所など、和洋折衷の室内をもつ水沢県庁記念館を見学し、仙台に戻る。

写真:上から、隈研吾《森舞台》、登米の旧尋常小学校

2012/09/23(日)(五十嵐太郎)

「ARCHIZINES OSAKA/TOKYO」展

会期:2012/09/21~2012/09/23

京都造形芸術大学・東北芸術工科大学 外苑キャンパス[東京都]

仙台から東京に移動し、駆け込みで「ARCHIZINES OSAKA/TOKYO」展の最終日を訪れる。海外を巡回している建築雑誌展の日本バージョンだ。日本展はRADが企画し、元木大輔が会場構成を担当している。五十嵐の関係では、もう20年前になり、歴史化された筆者が大学院時代に手がけていた同人誌『エディフィカーレ』、東北大学のデザイン系の活動をまとめる年報『トンチク』、せんだいスクール・オブ・デザインの『S-meme』、五十嵐研の有志が刊行している『ねもは』などが展示される。今回、アートブックフェアを初めて訪れたのだが、想像以上に規模が大きい。いろいろな本や雑誌のブースが、会場となっている京都造形芸術大学の外苑キャンパスを埋め尽くす。知り合いにも多く会う。

2012/09/23(日)(五十嵐太郎)

藤岡亜弥「離愁」

会期:2012/09/09~2012/09/29

AKAAKA[東京都]

藤岡亜弥には『さよならを教えて』(ビジュアルアーツ、2004)という名作がある。フランソワーズ・アルディの物憂いメロディの名曲にのせて、エストニアからフィンランドへ、さらにヨーロッパ各地を彷徨うロード・ムービーのような写真集だ。藤岡にはむろん『私は眠らない』(赤々舎、2009)のような、ひとつの土地に根ざしたいい作品もあるのだが、僕はどちらかというと彼女の「旅もの」の方が好きだ。
今回AKAAKAで展示された「離愁」もブラジルへの旅の産物である。藤岡の祖母はブラジル移民の二世で、20歳のときに日本に帰国した。その遺骨をかかえ、60年前の親友「文江さん」の行方を探して、彼女は2002年と2011年の二度にわたってブラジル各地を旅する。会場にはその間に撮影した42点の写真と、昔の思い出を語る日系人たちを撮影したビデオの画面をプリントアウトした画像、彼らの肉声を起こしたテキストが展示してあった。
結局、「文江さん」はすでに亡くなっており、いまや四世の代になっている日系人たちとの交流も、中途半端なものにならざるをえない。だが旅では多くの場合、当初の目的が達成されることはなく、宙吊りの気分のままに時が過ぎていくのではないだろうか。そんななかで少しずつ形をとり、旅の時間を侵食していく「離愁(サウダージ)」の感情が、微妙に揺らぎつつ連続していく写真群に色濃くまつわりついているように見える。いまのところ、写真集になる予定はないようだが、ちょうど『さよならを教えて』のように、テキストと写真とが絡み合って進行していく幻の写真集が見え始めているように感じた。

2012/09/27(木)(飯沢耕太郎)

Chim↑Pom展

会期:2012/09/22~2012/10/14

パルコミュージアム[東京都]

渋谷のパルコにて、Chim↑Pom展を見る。海外で制作されたゴミや排ガスの作品もあったが、パルコならではの場所の特性をいかした展示がおもしろい。例えば、建物ファサードの巨大ロゴを外し、室内に「P」と「C」を移設したもの。そして店内のブティックを再現したような部屋があり、そこをハチャメチャにドローイングするものなどである。

2012/09/27(木)(五十嵐太郎)

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