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2010年05月15日号のレビュー/プレビュー

日刊建設通信新聞社(編)『復刻 建築夜話 日本近代建築の記憶』

発行所:日刊建設通信新聞社

発行日:2010年3月

貴重な本である。これは1960年代から70年に日本短波放送にて放送した建築家、歴史家、構造家らの対談シリーズを収録したものだ。現在、筆者も建築系ラジオという自主的なメディアを展開していることもあって、音声によるオーラルヒストリーの重要性とおもしろさを感じているだけに、本書の試みがいかに重要なのかがよくわかる。丹下健三、アントニン・レーモンド、村野藤吾、内藤多仲、藤島亥治郎らに対し、若い作家や彫刻家らが聞き役となり、建築についての想いが率直に語られる。やはり、ここには書き言葉とは違う、生々しい言葉がある。公式な歴史に記録されないような、ささいなエピソードもおもしろい。もっとも、これは専門家同士の難しい対談でもない。相手が建築の専門でない場合、さらにわかりやすい言葉が選ばれている。欲を言えば、音声データが入ったCDを付けるか、一部だけでもウェブから聴けるようになっていれば、もっと良かったのだが。

2010/04/30(金)(五十嵐太郎)

青木茂『建築再生へ』

発行所:建築資料研究社

発行日:2010年3月1日

精力的にリファイン建築をつくる青木茂の新刊である。今回は、田川後藤寺サクラ園やルミナスコート壱番館など、具体的な事例をもとに、行政対応、計画、施工などのポイント、そしてクライアントの声を紹介しており、実践的な手引書をめざしたものだ。むろん、リファン建築は、まさにケース・バイ・ケースであり、一般的なマニュアル化は難しいだろう。が、それゆえ、各プロジェクトからさまざまなドラマも読みとれて興味深い。

2010/04/30(金)(五十嵐太郎)

『都市計画』(都市計画学会誌)284号

発行所:日本都市計画学会

発行日:2010年4月25日

特集は「1960年代の都市計画 再考」。都市計画学会誌の中でも、特に印象的な号である。執筆陣も、青山やすし、蓑原敬、平良敬一らをはじめ、錚々たるメンバーである。編集担当の武田重昭、佐藤宏亮らは、現在われわれが直面している都市状況の原点として1960年代をあげ、線引きや容積制度が定まり、オリンピックなどの大規模イベントに伴って都市基盤の整備もなされたこの時代の再考を促す。初田香成は、川上秀光の論考他を参考に都市再開発を再考し、木下光は、浅田孝の1950年代と1960年代の活動などから、浅田のもっていた都市像をまとめ、平良敬一は、編集者の視点から1960年代の都市計画について語るなど、いずれも「熱い」内容である。日本の都市計画を大きく再考する布石となるような特集だと感じた。
ところで、この読み応えのある号を読みつつさらに貪欲に思ったのは、半世紀前の1960年代からさらに半世紀遡った1910年代についても、いずれぜひ特集してほしいと感じたことである。旧都市計画法の制定された1919年とその周辺の出来事を同様にクローズアップできると、現在の日本の都市を定めている大きな土台と前提にいきつくのではないかと思った。

2010/04/30(金)(松田達)

阿蘭陀とNIPPON

会期:2010/04/24~2010/07/02

たばこと塩の博物館[東京都]

日蘭通商400周年記念展。400年といっても展示の中心はもちろん、オランダが日本と唯一通商を許された江戸時代の約250年に絞られてくる。この間、出島という針の穴のような窓口を通して伝わってくる西洋の文明文化が、いかに誤解されたり拡大解釈されたりしながら日本に根づいていくかが見どころとなる。その観点から見れば、本展には出てないけれど、レンブラントの解剖図と杉田玄白らの『解体新書』が、フェルメールの風俗画と《彦根屏風》をはじめとする室内遊楽図が接点を持ち始めるのだ。ま、ぼくの興味は17世紀オランダ絵画と日本美術の接点だけですけどね。

2010/04/30(金)(村田真)

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トーキョーストーリー

会期:2010/04/07~2010/05/23

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

TWS青山のクリエーター・イン・レジデンスに滞在していた6人のアーティストによる作品発表。これがとてもおもしろかった。アバケ(アーティスト名)はホームレスの小屋を建てたり、オリーブの葉をくわえたハトをデザインしたピースと弓矢をデザインしたホープを対峙させたり、ニコラ・ルリーヴルは仮設壁の裏の狭い空間に《細い路地》をインスタレーションしたり、栗林隆は屋台をつくったり、みんなストリート系なのだ。ストリート系をレジデンスさせるとは、都もイキなはからいをしたものだ(知事は知ってるのか?)。唯一オブジェ系のチョン・ジュンホは、木で彫った頭蓋骨を金のバラの花で囲むという秀作を出品。ついでに「ナイキ化」で揺れる宮下公園に行って、アバケの野外作品を鑑賞。充実した展示であった。

2010/04/30(金)(村田真)

2010年05月15日号の
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