2018年10月15日号
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artscapeレビュー

ヨーロピアン・モード

2016年05月15日号

会期:2016/03/08~2016/05/17

文化学園服飾博物館[東京都]

2階展示室は、18世紀後半ロココの時代から20世紀末まで、女性モードの通史を見せる毎年恒例のヨーロッパを発信源とする服飾史の入門展示。ドレス等の実物資料のみならず、ファッションの変遷をそれぞれの時代の社会的背景──政治、経済、戦争──とともに紹介しているので、服飾を学ぶ学生のみならず、歴史に関心を持つ人ならばとても興味深く見ることができると思う。とくに今年はファッション関連の展覧会がいつになく多く予定されており、本展はその予習・復習にも最適だ。
今回展示されているファッション関連資料で興味深いものは、19世紀後半から20世紀初頭にかけての百貨店や通信販売のカタログ、ファッション誌、そしてファッション誌に綴じ込まれた型紙。19世紀半ば以降、ファッションが産業化してゆく頃に百貨店が登場し、既製服の販売が行なわれるようになる。1870年代のルーヴル百貨店(仏)のカタログには、ドレスやコート、帽子やタイ、子供服のイラストが網羅されていた。ありとあらゆる生活用品が掲載されていたモンゴメリー・ウォードやシアーズ・ローバック(米)の通信販売カタログにも多くの種類の女性服、子供服が掲載されている。こうしたカタログからは、ハイファッションではない、人々が日常的に身につけていたファッションとその価格を知ることができる。また、服は買うものであるだけではなく、つくるものでもあった。19世紀後半には印刷技術の進歩によりモード誌は大型化、低価格化し、雑誌の購入層が下方に拡大。それにともなって実用的な記事が増え、掲載されたドレスの実物大型紙が綴じ込まれるようになった。型紙は用紙を節約するために、各所のパーツが実線、破線、点線に分けて重ねて1枚の大きな紙に印刷されており、購読者はこれを別の紙に写しとって使用する。テキスタイル産業の機械化による布の価格低下、ミシンの登場と割賦販売による家庭への浸透が、ファッションを人々に身近なものにしたであろう様相がこれらの展示資料から窺われる。
1階展示室は、「モードの帝王」と呼ばれたイヴ・サン=ローラン(1936-2008)の特集。クリスチャン・ディオール急逝(1957)の後、1958年に21歳でメゾンを継いだイヴのウールのドレス、1962年の独立から1980年代までの仕事を作品と資料とでたどる。ドレスのキャプションにはタグの写真が添えられている。1968年のイヴニング・ドレスのタグには「PAR SEIBU TOKYO」とある。西武百貨店の堤清二は、パリ在住の妹・堤邦子を通じて1960年代に百貨店業界のなかではいちはやく欧米ブランドを導入している。西武とサン=ローランはオートクチュールラインのライセンス契約を結んでいたそうだ。[新川徳彦]


『ハーパース・バザー』付録の型紙(1880年1月)


展示風景

2016/04/15(金)(SYNK)

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