2018年01月15日号
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artscapeレビュー

ニュー“コロニー/アイランド”2~災害にまつわる所作と対話~

2016年05月15日号

会期:2016/03/11~2016/06/26

アートエリアB1[大阪府]

会期中に熊本地震が起きたことで、よりアクチュアリティを増して体験された本展。東日本大震災の被災地となった故郷・陸前高田を撮影した畠山直哉の写真、阪神・淡路大震災から10年後の街を撮影し、風景の中の痕跡の(不)可視性を探る米田知子の写真、放射能汚染と食品の安全性について尋ねる買い物客と店員の会話を「再演」した高嶺格の映像作品など、アーティストによる表現物に加えて、仙台の「3がつ11にちをわすれないためにセンター」や女川の「対話工房」など、地域に根差した記憶や震災経験のアーカイブ活動が紹介されている。さらに、災害史や地質学の資料を合わせて展示することで、通時的な軸線と地球規模の視座へと拡がりを見せ、私たちの日常生活が、不可視だがつねに動き続けている不安定な岩盤の上に成立していることを改めて意識させる。
本展が秀逸なのは、展示会場を一軒家の間取りに見立てて、アーティストの作品、地域のアーカイブ活動、災害史や地質学の資料をその中に共存させている点だ。駐車場から始まり、実寸のスケールで仮設壁が立てられ、玄関のポーチ、子ども部屋、居間、台所、トイレ、浴室や寝室へと続く。ソファやベッドなどの家具や家電製品も実際に設置され、モデルルームのような空間だ。例えば、せんだいメディアテークがNPO法人20世紀アーカイブ仙台と協働して行なった「3月12日はじまりのごはん」は、震災後の最初の食事についての記憶を写真や文章で記録するプロジェクトだが、停電に対処した生活の知恵を綴った文章や炊き出しの様子の写真などが食卓や冷蔵庫に貼られ、生活空間に移し替えられることで、見る者の実感に訴えかける説得力を増している。
一方で、居心地よく設えられた室内空間の「外」には、「庭」に見立てた空間の中に、志賀理江子の写真作品「螺旋海岸」が展示され、異様な緊張感をもって対峙する。洞窟の内部や胎内を思わせる、あるいは神の宿る神聖な御座所のような白い岩。その白い塊は、新たな生命の宿りなのか体を蝕む浮腫なのか定かでない、下腹部の白い膨らみへとリンクする。無数の手に掲げられて浮遊する体と、葬送の儀式。オパールのように虹色の光を宿して輝く、鋭い動物の目の接写と思しきイメージは、星くずの散らばる無限大の宇宙空間を思わせるとともに、始源からこちらを見つめる巨大な目となって眼差しを差し返す。イメージの魔術的な連鎖を通して、生と死の循環、それを滞りなく行なうための祭祀、生命が自然の中へと還っていくことが幻視される。その展示はまた、畏怖を抱かせる自然の得体の知れない力が、人間の居住空間と扉一枚を隔てて蠢き、いつ「内部」へと侵入してくるか分からない存在であることを、無言の迫力でもって示していた。

2016/04/22(金)(高嶋慈)

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