2018年07月15日号
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artscapeレビュー

ぼくと戦争─小池仁戦争体験画展

2016年05月15日号

会期:2016/02/24~2016/04/10

東京大空襲・戦災資料センター2階[東京都]

東京大空襲・戦災資料センターは文字どおり東京大空襲の記録と記憶を伝えるため、2002年に開館した民立民営の施設。場所は地下鉄住吉駅から徒歩15分ほどの江東区北砂。会場はギャラリーというより多目的スペースで、椅子が並んでいたりピアノが置いてあったり、ほかの人の絵や戦災資料なども展示してあるので、どこからどこまでが小池仁の作品かわかりづらい。ここでは作家性や固有名より、戦災体験の記憶と記録を伝えることが重要なのだ。小池の作品は100号前後の大作7点と、A4の紙に描いたスケッチが30点ほど。スケッチは、昨年自費出版した画文集『戦争をしてはならない本当の理由』の原画だという。この出版を機に展覧会を開くことになったようだが、展示のメインはやっぱり油絵の大作7点だ。東京大空襲の被災地・被害者を描いた《焼跡の少年》《燃える人》《1945. 3. 10 TOKYO》などのほか、日の丸を背景に昭和天皇らしき軍服姿の二人の人物を描いた《3月18日のドンキホーテ》と題する作品もある。3月18日(1945)というのは天皇が東京大空襲の焼跡を視察した日だが、事前に死体は片づけられていたというから、その隠蔽工作を皮肉ったものだろう。いずれも主題は重いが、絵柄は表現主義風あり、抽象風あり、キュビスム風?ありと多彩。いろいろ試してみたというより、ひとつのスタイルでは描ききれないほど重く、複雑な体験だったということかもしれない。しかもすべて2000年以降の制作というから、戦後50年以上たたなければ絵にすることさえできなかったということだ。

2016/04/01(金)(村田真)

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