2018年10月15日号
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artscapeレビュー

「マルティン・チャンビ写真展」

2016年05月15日号

会期:2016/04/19~2016/05/16

ペルー大使館 視聴覚室“マチュピチュ”[東京都]

マルティン・チャンビ(1891~1973)は南米・ペルーを代表する写真家。アンデスの先住民の出身で、鉱山技師の下働きをしながら、イギリス人から写真を学び、1918年、クスコ県シクアニ村に写真スタジオを開業する。1920年にクスコに移り、先住民を含むその地の住人たちの、堂々たる威厳を備えたポートレートや、緊密な構図の集合写真を撮影した。マチュピチュ遺跡や建築物の記録写真、スナップショット的な街の写真も多数残している。
リアルな描写に徹してはいるが、どこか「魔術的リアリズム」の伝統に根ざしているようでもある彼の写真は、近年評価が高まってきており、2015年10月~2016年2月にリマ美術館で開催された大回顧展に続いて、2017年にはサンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)での個展開催も決まっているという。カーニバル評論家としても知られる、写真家の白根全の企画で開催された今回のペルー大使館での個展は、チャンビの作品の日本での初公開である。30点余りと数は少ないが、ガラス乾板から引き伸ばされたクオリティの高いプリントが展示されていた。
今年になって、ラテンアメリカの写真家たちの写真展が相次いでいる。グアテマラの屋須弘平(あーすぷらざ)、メキシコのグラシエラ・イトゥルビデ(タカ・イシイギャラリー フォトグラフィ/フィルム)、ブラジルの大原治雄(高知県立美術館)と展示が続き、このチャンビ展に続いて2016年7月2日からはメキシコの写真家、マヌエル・アルバレス・ブラボの大規模展が世田谷美術館で開催される。こうなると、ラテンアメリカの写真家に共通する特色を抽出できそうな気もしてくる。先に述べた、リアルさと幻想性が同居する「魔術的リアリズム」も、その重要な一要素となりそうだ。

2016/04/16(土)(飯沢耕太郎)

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