artscapeレビュー
田村葵 展「energy flow」
2013年11月15日号
会期:2013/10/01~2013/10/13
ギャラリーマロニエ space5[京都府]
前回、京都らしい古い建物の和室空間で個展を開いていた田村葵。今回はコンクリートうちっぱなしの壁面空間というまったく趣きの異なるギャラリーで新作を発表していた。作品は藍墨と紫墨で描かれた水墨画。微妙な表情を見せる墨の色もだが、余白部分が大きく占める画面に繊細に表現された波や文様のようなイメージ、それらのタッチが、目には見えない風の流れや湿度感、変化する光の表情を思わせてそこはかとない奥深さをたたえている。展示空間に射し込む外光の具合によっても印象が変化して見えるのが不思議。一見、おとなしすぎるくらいの表現にも見えるのだが、それはむしろ田村の狙いでもあり彼女の作品の魅力とも言えるだろう。作品を介してさりげなくその場の光の様子や空気、時の流れを見る者に意識させる。また次はどんな雰囲気の空間で新作が発表されるのか楽しみにしている。
2013/10/10(木)(酒井千穂)