artscapeレビュー
TOKYO 1970 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS 9
2013年11月15日号
会期:2013/10/05~2013/10/29
アルマーニ/銀座タワー9階[東京都]
東京・銀座のアルマーニの9階にできた新しいスペースで「時代を挑発した9人の写真家たち」というサブタイトルの写真展が開催された。出品作家と作品は有田泰而「First Born」、沢渡朔「Kinky」、須田一政「わが東京100」、立木義浩「舌出し天使」、寺山修司「摩訶不思議な客人」、内藤正敏「東京」、細江英公「シモン 私風景」、渡辺克巳「新宿群盗伝」、そして森山大道の「写真よさようなら」(写真集未収録作)である。
見ていてどこか既視感がある写真が多いのは、キュレーションを担当した長澤章生が、かつて彼が銀座で運営していたBLD GALLERYで展示した作品が多いからだろう。BLD GALLERYは現在休廊中なので、そのコレクションをこういうかたちでお披露目しておくのは悪くないと思う。1970年代は日本写真の黄金時代であり、この時期の写真を幅広い観客に知ってもらうには、とてもいい企画ではないだろうか。ただ「時代のトリックスターであった寺山修司を座標軸に据え、それぞれ何らかの形で彼の磁場と引き合う関係にあった」写真家たちを取り上げるという企画者の意図は、あまりよく伝わってこなかった。顔ぶれがあまりにも総花的すぎるし、作品点数もやや多すぎた。須田一政が45点、渡辺克巳が39点、内藤正敏が30点という数は、それほど広くない会場では、あまりバランスのよい展示にはならない。もう少し点数を絞り込んで、ゆったりと見せてもよかったのではないだろうか。
会場に作家解説、作品解説がまったく掲げられていないのも気になった。一人ひとりの写真史的な位置づけがもう少しくっきり見えてくれば、観客の興味をもっと強く喚起することができると思う。
2013/10/10(木)(飯沢耕太郎)