artscapeレビュー
反重力展
2013年11月15日号
会期:2013/09/14~2013/12/24
豊田市美術館[愛知県]
これまでに何度も訪れたが、初めて雨の日の豊田市美術館を見た。でも、カッコいい建築はやはりカッコいいし、中谷芙二子による霧の作品は迫力を増す。屋外の壁柱廊は、雨の日に高橋節郎館に移動するときに便利だった。ここで渡辺豪の映像を発見する。実は昨年、この作品を表参道のルイ・ヴィトンで見て、トリエンナーレの依頼を決めた。ほかにも豊田市美の反重力展とあいちトリエンナーレには、さまざまなリンクが指摘できるだろう。前回のトリエンナーレ2010のとき、豊田市美では石上純也展が開催され、今回はトリエンナーレの作家になった。25m級のもっと巨大なふうせんの展示を計画していたが、これが実現していれば、まさに反重力の作品。あいちトリエンナーレ2013における壁から立つ男や浮く男などのフィリップ・ラメットの写真、揺れる建築群のハン・フェン、藤森照信の宙に浮く茶室なども、反重力展を補足する作品群とみなすことが可能だろう。中谷の霧と名和晃平の泡も比較すると興味深いし、両方で高橋匡太が関わっている。
鼎談「建築に反重力は可能か」が行なわれ、中村竜治は構造的でありながら現象的でもある繊細なインスタレーション(今回の出品作もそう)、青木淳は空間が反転していく概念的なちらつきによる空間操作をプレゼンテーションした。その後、筆者も交えて、モダニズムの反重力、建築とアートなどを語る。青木の分類によれば、ともにモダニズムの合理性や軽さを持ちながら、ミースは先に空間ありき、フラーは先に重力ありきのデザインだという。とすれば、中村の作品「ダンス」は、スケールの操作によって、二重性があると思う。もし蟻がこれを見上げると、重力からの造形を感じ、逆に人がこれを見下ろすと空間からの形態を感じるはずだからだ。
写真:上=高橋節郎館、中=中村竜治作品、下=中谷芙二子作品
2013/10/20(日)(五十嵐太郎)