2021年12月01日号
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artscapeレビュー

ターナー展 Turner from the Tate: the Making of a Master

2013年11月15日号

会期:2013/10/08~2013/12/18

東京都美術館[東京都]

日本では久しぶりの大規模なターナー展。ターナーというと、晩年の朦朧とした大気の表現が印象派の先駆けみたいにいわれるが、初期の作品を見ると意外と古風で、レンブラントやクロード・ロランを彷彿させる。でも40歳をすぎるころからクセのある色彩や丸みを帯びた形態、かすんだような大気の描写が出てきて、なにかこの世のものとは思えない光景が現出し始める。晩年のモネと同じく目をわずらったんじゃないかと勘ぐるのだが、細部は意外としっかり描き込んであって、むしろその粗密の落差がターナーらしさを生み出しているのかもしれない。「崇高」を絵に描いたような《グリゾン州の雪崩》、古典主義的な《ディドとアエネアス》、夢の情景みたいな《チャイルド・ハロルドの巡礼──イタリア》、クロード・ロランに触発された《レグルス》、ラファエロのいるパノラマ画《ヴァティカンから望むローマ》、モネを思い出す《湖に沈む夕陽》など佳品が少なくない。首をひねったのは、縦長の画面を水平に分割した抽象画。これは《三つの海景》というタイトルのように、三つの水平線を縦に並べたものだが、まるでロスコの絵みたい。もうひとつ興味深かったのは、画家愛用の絵具箱が出ていること。箱のなかには小さなガラス瓶や豚の膀胱でつくった袋入りの絵具が並び、登場したばかりのチューブ入り絵具が1本だけ入ってる(色は多用したクロームイエロー)。ようやく晩年になってチューブ入りの絵具が発明され、戸外での制作が容易になったのだ。

2013/10/11(金)(村田真)

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