2020年01月15日号
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artscapeレビュー

幻想の質量

2016年02月15日号

会期:2016/01/25~2016/02/06

2kw gallery[大阪府]

通貨、住空間、言語といった具体的なモノや素材を扱いながら、社会の共通観念を静かに揺るがすような3名の作家によるグループ展。山本雄教は、一円玉のフロッタージュの濃淡によって、画像の粗いドットを表現することで、高額紙幣の「絵」を描き出す。そこには、社会に流通する通貨の中で最小単位である一円玉が、高額紙幣に置換されるという転倒が起きているが、その像はモザイクがかけられたかのように曖昧にぼやけている。また、松井沙都子は、木目がプリントされた内装材やカーペットといった、建築の表面を覆う薄い表層と照明器具を組み合わせ、住空間の一部や家具を思わせる立体によって、暖かみを喚起させつつも空虚で薄っぺらい「虚」の空間を出現させている。それは、鉄骨やコンクリートといった無機質な骨組みの表層を覆い隠し、見かけだけは「居心地良く、暖かそうに」設える皮膜であり、私たちの居住空間はそうした表層の均質性に覆われているのだ。また、森村誠は、英語の辞書からアルファベットの「g」だけを切り抜いた作品を出品している。認識やコミュニケーションの基盤をなす言語の体系、その象徴的存在である辞書は、恣意的なルールによって虫食いのような様相を呈している。切り抜かれたおびただしい極小の紙片は、グラム数の表示とともに傍らのガラス容器に詰められている。わずか数十グラムというその「軽さ」は、均質な住空間の表面に囲まれて暮らし、国家が保証する通貨の価値を信じて経済活動を行ない、言語的コミュニケーションによって意思疎通を図っていると疑わない私たち、その共同幻想に支えられたシステムの仮構性をシニカルに照らし出していた。

2016/01/30(土)(高嶋慈)

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