2020年07月01日号
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artscapeレビュー

柿本ケンサク「TRANSLATOR」

2016年02月15日号

会期:2016/01/16~2016/01/31

代官山ヒルサイドテラス ヒルサイドフォーラム[東京都]

柿本ケンサクは1982年、香川県生まれ。学生時代から映像作家として活動し始め、コマーシャルフィルムを中心に多くの仕事をこなしてきた。今回の代官山ヒルサイドテラス ヒルサイドフォーラムでの個展は、写真家としての本格的なデビュー展になる。
ソルトレイクシティのハイウェイ、アイスランドの氷海、スコットランド・アバディーンのCM撮影現場、カザフスタンのロケット打ち上げ、イギリス・ウェストンスーパーメアのアーティストがプロデュースしたという遊園地、モンゴルの草原地帯の人々──世界中を移動しながら仕事を続けている映像作家らしく、次々に新たな眺めがあらわれては消えていく。被写体のつかまえ方は揺るぎなく的確だし、それぞれのエピソードごとの写真群の並べ方、まとめ方も実にうまい。とはいえ、その映像センスのよさは諸刃の剣で、どこか空々しい「コマーシャルっぽさ」を感じてしまう写真も多かった。
気になったのは、むしろ撮影の合間にふと横を向いてシャッターを切ったような日常的な場面の写真で、それら空き瓶、食べかけのバナナ、枯れ葉や吸い殻に覆われたマンホールの蓋、プラスチック製の蠅たたきなどの捉え方に、彼らしいものの見方が芽生えつつあるように思う。今のところ、個々のエピソードを繋いでいく強固なメッセージはまだ見えてこないが、巨視的なイメージと微視的なイメージを対比させたり、重ね合わせたりしていくことで、「写真家」としてのスタイルが定まっていくのではないだろうか。そんな可能性を強く感じさせる展示だった。

2016/01/22(金)(飯沢耕太郎)

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