2020年01月15日号
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artscapeレビュー

川田喜久治「Last Things」

2016年02月15日号

会期:2016/01/08~2016/03/05

PGI[東京都]

川田喜久治は2000年代以降、以前にも増して精力的に作品を制作し、発表し続けている。2002~2010年の写真は「World’s End(世界の果て)」、2011~2012年の写真は「2011──Phenomena(現象)」というタイトルでまとめられ、それぞれフォト・ギャラリー・インターナショナル(現PGI)で展示された。そしてその「最後の項」として提示されたのが、今回の「Last Things(最後のものたち)」のシリーズである。
目の前の事象を「滅び」の相の下に捉えていく視点は、最初の写真集である『地図』(美術出版社、1965)以来一貫している。だが、そのメランコリックで瞑想的なイメージの強度は、近作になればなるほどより増してきているようにも感じる。川田は1933年生まれなので、80歳を越えてから、なお新作を次々に発表しているわけで、その創作意欲の高まりは特筆すべきものといえるだろう。
2000年以降の3シリーズを比較すると、微妙な変化も生まれてきている。今回の「Last Things」は、デジタル画像の加工や合成のテクニックがやや過剰なほどに使われていた前作と違って、ストレート写真への回帰が目につく。それだけではなく、天体現象と地上の現実を対比させる導入部は旧作の「The Last Cosmology」(1996)を思わせるし、「気まぐれ Los Caprichos」(1972~75)や『ルードヴィヒII世の城』(朝日ソノラマ、1979)につながる写真もある。つまり「Last Things」には、どことなく彼の写真家としての軌跡を辿り直しているような趣があるのだ。
今回の発表で三部作の一応の区切りはついたようだが、川田自身はこれで終わりという考えは毛頭ないようだ。さらに次のステップへとたゆみなく歩みを進めていく、そんな覚悟が充分にうかがえる意欲的な展示だった。

2016/01/15(金)(飯沢耕太郎)

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