artscapeレビュー

ビアズリーと日本

2016年02月15日号

会期:2015/12/06~2016/01/31

宇都宮美術館[東京都]

世紀末を彩るイギリスのイラストレーター、ビアズリーの展覧会はこれまで何度か開かれてきたが、ビアズリーと日本美術の接点を探る展示は初めてお目にかかる。ビアズリーというと繊細な曲線と大胆な構図、白黒の明快なコントラストから日本美術の影響を受けたジャポニスムの画家、という見方もあるが、同展を見る限りビアズリーが受けた日本美術の影響より、ビアズリーが与えた日本美術への影響のほうがはるかに大きいように思われる。展覧会の初めのほうでは北斎や英泉らの浮世絵、植物装飾の型紙など、ビアズリーが影響を受けた日本美術が展示されているが、彼自身「ちょっとばかし日本的なやつだが、でもまったくのジャポネスクではないんだ」と述べてるように、影響は限定的だったようだ。中盤では、ビアズリーの代表作にとどまらず世紀末芸術を代表するといっても過言ではない《サロメ》、雑誌『イエロー・ブック』や『サヴォイ』に掲載されたイラストなどを展示。後半では、ビアズリーの早逝後『白樺』などで作品や論文が掲載され、大正期にブームを巻き起こした様子が紹介される。高畠華宵や竹中英太郎らは「サロメ」を描いてるし、恩地孝四郎、田中恭吉、蕗谷虹児、山名文夫など影響を受けた画家は数知れない。ひょっとしたら、ビアズリーの絵を見たときに感じる親近感は、彼が日本美術の影響を受けたからというより、彼の影響を受けた大正・昭和のデザイナーやイラストレーターの作品に目がなじんでいたからかもしれない。ちなみにビアズリーの影響を受けた日本人の多くは日本画出身だ。

2016/01/09(土)(村田真)

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