artscapeレビュー
学芸員を展示する
2016年02月15日号
会期:2016/01/09~2016/03/21
栃木県立美術館[栃木県]
美術館が「美術館建築」や「学芸員の仕事」や「コレクション」といった自己言及的テーマを、常設展ではなく企画展として取り上げるようになったのは90年代からだろう。それは80年代から美術館自体が急増したこと(しかも奇抜なデザインの建築が多かった)、それに伴い学芸員(キュレーター)の仕事が注目され始めたことのほか、バブル崩壊により予算が削減され、身近な素材で安上がりに展覧会を企画しなければならなくなった事情もあるに違いない。この「学芸員を展示する」も、基本的に自館のコレクションを素材にした「舞台裏まで見せちゃいます」的な企画展だ。構成は「コレクションができるまで」「作品を守り伝える」「調査研究」「展覧会を創る」「つなぐ美術館」の5部。地元画家の清水登之をはじめ、高橋由一、川上澄生、トロワイヨン、ターナー、ゴールズワージーらの作品のほか、版木、輸送用の箱、来歴を示すラベル、箱書きなども併せて紹介している。パネル展示の「美術館すごろく」では展覧会ができるまでを双六形式で見せているが、これを見ると、「企画会議でプレゼン」からスタートし、予算要求や助成金申請、文献調査、出品候補リスト作成、出品交渉、作品撮影、ディスプレイ業者と打ち合わせ、カタログ制作、論文執筆、広報、作品借用、展示、「展覧会オープン」でゴールするまでじつに雑多で、しばしば「雑芸員」と自嘲気味に語られるのも理解できる。途中「まさかの予算大幅削減!」のコマがあり「振り出しに戻る」となっていて、学芸員も楽じゃないと訴えている。
2016/01/09(土)(村田真)