artscapeレビュー
《マーシャルフィールドビル》《カーソンピリースコット百貨店》
2016年02月15日号
[アメリカ、シカゴ]
三度目のシカゴだが、まずは昔のこの街らしさを最も感じるループエリアを歩く。初めて訪れたのは、もう20年以上前だが、ほとんど変わっていない。店子は変化しても、建築は同一性を維持している。せっかくの資産を自ら壊し、オウンゴールを続ける横浜と違い、近代建築の発祥の地を本当によく残している。特にダニエル・バーナムによる《マーシャルフィールドビル》を見てから、ルイス・サリヴァンが設計した《カーソンピリースコット百貨店》に入ると興味深い。前者は古典主義の意匠を採用しているが、近代的な構造のデパートのために、空間の縦横比が違い、西欧の古建築に見慣れていると、プロポーションのおかしさが気になってしまう。一方、後者は中世的な新意匠を開発し、比例の奇妙さをうまく回避している。
写真:上段=《マーシャルフィールドビル》、下段=《カーソンピリースコット百貨店》
2015/12/27(日)(五十嵐太郎)