2020年01月15日号
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artscapeレビュー

地霊 ──呼び覚まされしもの~東川賞コレクションより~

2016年02月15日号

会期:2016/01/30~2016/05/15

十和田市現代美術館[青森県]

北海道上川郡東川町で1985年から開催されている東川町国際写真フェスティバル。それにあわせて毎年東川賞(海外作家賞、国内作家賞、新人作家賞、特別作家賞、飛彈野数右衛門賞)が選定され、受賞者の作品を収集してきた。30年以上にわたるそのコレクションは2300点以上にのぼるという。その中から20人の写真家たちの作品約120点を選び、筆者がゲスト・キュレーターとして構成したのが、十和田市現代美術館で開催された「呼び覚まされしもの」展である。
「地霊」(ゲニウス・ロキ)というのは、それぞれの土地に根ざした守護霊のことである。東川賞の受賞者たちの作品を見ているうちに、写真家たちが意識的、あるいは無意識的に、「地霊」の存在を感じとりつつ撮影した写真がかなりたくさんあるのではないかと思えてきた。それらを「第一部 生と死をつなぐもの」(小島一郎、須田一政、グラシエラ・イトゥルビーデ[メキシコ]、荒木経惟、深瀬昌久、高梨豊、猪瀬光、アントワーヌ・ダガタ[フランス]、小山穂太郎、鈴木理策、オサム・ジェームス・中川[アメリカ]、志賀理江子、川内倫子)、「第二部 土地と暮らし」(飛彈野数右衛門)、「第三部 精霊との交歓」(掛川源一郎、金秀男[韓国]、クラウディオ・エディンガー[ブラジル]、マニット・スリワニチプーン[タイ]、宇井眞紀子、ヨルマ・プラーネン[フィンランド])の三部構成で展示している。
年代的にも、地域的にも、作風においても、かなり幅の広い人選だが、「地霊」というテーマの下にくくると、写真同士が相互に共鳴して、意外なほどの共通性が見えてきたのが興味深かった。圧巻は、東川町に生まれ育って、役場に勤務しながら街の暮らしを細やかに記録し続けた飛彈野数右衛門の写真群だった。今回はスペースの関係で40点余りしか展示できなかったのだが、その全体像をきちんと見ることができる機会がほしい。飛彈野の写真に限らず、東川賞コレクションにはさまざまな展覧会の企画を実現できる可能性が含まれていると思う。ほかの美術館やギャラリーでも、ぜひ別な切り口での展示を期待したいものだ。

2016/01/30(土)(飯沢耕太郎)

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