2020年04月01日号
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artscapeレビュー

狩野一信の五百羅漢図展(後期)

2016年02月15日号

会期:2016/01/01~2016/03/13

増上寺宝物展示室[東京都]

五百羅漢図といえば幕末の狩野一信のそれが有名だが、タイトルにあえて「狩野一信の」とつけているのは、森美術館で「村上隆の五百羅漢図展」が開かれ話題になっているので、便乗しようとしたのか掩護射撃しようとしたのかは別にして、こっちが本家本元だと主張したかったからに違いない。もちろん五百羅漢図は一信以前から描かれていたけど、一信の作品はスケールにおいても表現においても空前のもので、これがなければ村上の五百羅漢図も発想されなかったはず。今回(後期)は軸装の全100幅のうち第41幅から第60幅までの公開。わずか20幅とはいえ、一信にとってはもっともノッていた時期ではないかと思わせるほど奇想天外な表現に満ちている。例えば修行する羅漢を描いた第45図。これが描かれた幕末は西洋美術のさまざまな技法・知識が導入されつつある過渡期だったが、遠近法や陰影表現などは正確に伝わらないまま見よう見まねで駆使されていたため、光線の逆の「影線」みたいなありえない表現が見られるのだ。同じケレン味でも、村上が戦略的にケレン味を狙ったとすれば、一信は意図しない天然のケレン味にあふれているのだ。

2016/01/06(水)(村田真)

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