2021年12月01日号
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artscapeレビュー

有元伸也「WHY NOW TIBET」

2009年11月15日号

会期:2009/10/06~2009/10/11

TOTEM POLE PHOTO GALLERY[東京都]

有元伸也は、1999年に刊行した写真集『西蔵(チベット)より肖像』(ビジュアルアーツ専門学校)で第35回太陽賞を受賞した。それから10年、今回の展示には雑誌の取材でふたたびチベット奥地の街、石渠(セルシュ、チベット語ではザチュカ)を訪れて撮影した写真が並んでいた。
被写体に真正面から6×6判のカメラを向けて撮影し、深みのあるモノクロームのプリントに仕上げていく手法はまったく同じで、そこに写っている住人たちの姿もあまり変わりないように見える。ただ、よく見ると、街には新しい建物が増えており、馬をオートバイに乗り換えた若者たちの姿も目立つ。それよりも「チベットの風景や人は変わらないが、一番変わったのは自分自身」という、有元本人の言葉の方が興味深かった。たしかにある種の衝動に突き動かされるように、真冬のチベットの大地を彷徨いつつ撮影された10年前の写真の切迫感と比較すると、今回のシリーズの被写体との対峙の仕方には余裕があるように感じる。
だが、僕はそのことを否定的にとらえることはないと思う。こうして間をおいて撮り続けることで、有元自身とチベットの変貌が、絡み合いつつ膨らんでいくような、厚みのあるドキュメンタリーが形をとってあらわれてくる予感があるからだ。それは同時に、彼が現在取り組んでいる「新宿」のシリーズを、別な角度から照らし出す光源にもなっていくだろう。

2009/10/08(木)(飯沢耕太郎)

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