2021年08月01日号
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artscapeレビュー

荒木経惟「広島ノ顔」

2009年11月15日号

会期:2009/10/10~2009/12/06

広島市現代美術館[広島県]

「アラーキーと写真」というレクチャーをするために広島市現代美術館に行ってきた。同館で開催中の荒木経惟「広島ノ顔」展の関連企画である。2002年に大阪からスタートをした「日本人ノ顔」プロジェクトも、福岡、鹿児島、石川、青森、佐賀と続いて今回で7県目。既に6,000人以上の公募モデルのポートレートが撮影済みという。とはいえ全国47都道府県を全部網羅するのが目標という壮大な企画だから、まだまだ先は長い。あとは荒木の体力と気力がどこまで続くかということだが、今の勢いを考えると何だかやってのけそうな気もする。もし完成すれば、個人の写真プロジェクトとしては史上最大級のものになるのは間違いないだろう。
レクチャーのために、以前の写真集と「広島ノ顔」を比較してみると、撮影のやり方や様式が少しずつ変化しているのがわかる。以前は単独のモデルの顔写真が多かったのだが、「石川ノ顔」のあたりから家族やグループの、全身像に近い写真が増えてきた。一人の“顔”に視線を集約していくだけでなく、集団の横の繋がりを意識させるようになってきているのだ。撮り方も、ブレや揺らぎ、画面の傾きが目立つようになってきている。フレーミングを保ち続ける集中力が落ちてきているということだろう。だが、それをマイナスととらえるのではなく、むしろ荒木自身の変化とプロジェクトそのものが一体化することをめざすべきではないかと思う。倒れるまで、いや倒れても撮り続けて、文字通りの「ライフワーク」にしてしまえば、これまでにない写真による日本人論の形が見えてくるはずだ。

2009/10/24(土)(飯沢耕太郎)

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